最終組の二組前でスタートした真板潔は、最終ホールで下り2メートルのバーディーチャンスに着けた。通算9アンダー。グリーン右サイドのリーダーズボードの最上段には、通算10アンダーの渡辺司の名があった。首位とは1打差であることは確認できた。
入念にパットラインを読む。カップ奥側からはスライスラインに見える。ボール位置からカップ方向の下りではフックラインに思えた。
カップに向かって真っ直ぐ打つと、真板は決断した。下りのパットラインだけに強くは打てない。やさしく打ったボールは、ゆっくり転がり出したものの、微妙に寄れて転がっているのが見て取れた。ボールはカップ左縁を抜けた。その瞬間、真板は天を仰ぎ、しばらく立ちすくんだが、返しのパーパットをきっちり沈めて、通算9アンダーをセーブしたのだった。
首位とは2打差の4アンダーでスタートした真板は出だしからショットが冴えて1、2、3番ホールで連続バーディーを奪取。5番パー5ホールでも1メートルのバーディーを沈める。6番ホールでボギーを叩いたが、「2メートルのボギーパットを沈められたのが大きかった」と真板は振り返る。
この日の好調さを象徴するのが8番パー5。ピンまで199ヤードの右ラフからの2打目を6番アイアンで打ち、ボールは花道を上手く転がってツーオンに成功したのだ。イーグルパットは6メートルのフックライン。打ち出したボールは心地良い乾いた音を奏でてくれた。この時点で首位に並び、9番パー3ホールでもバーディーパットを決め、前半30で折り返した。
「後半は(優勝を)意識してしまいました。10、11番ホールで短いバーディーパットを外し、その流れもあって12番パー3ではティーショットをバンカーに打ち込み、2メートルのパーパットを残しましたが、それをねじ込めたことで(精神的に)切れずに済みました。グリーンの速さ(11・5フィート)を気にしてショートめショートめになってしまい、前半とはゴルフの内容が変わってしまいました」
10番から15番ホールまでパーセーブが続き、16番パー3ホールで3パットを打ってしまう。そのまま通算9アンダーでフィニッシュし、真板はクラブハウスリーダーで後続組のプレーを待った。首位の渡辺が17番ホールでOBショットによるダブルボギーを打ったことで真板は単独首位になり、渡辺がスコアを伸ばせないままホールアウトしたことで真板の今季3勝目、シニアツアー通算5勝目が決まった。
「優勝できたのは嬉しいですけど…2日間大会で3勝ですからね。それに自分が上手くなった感じはないし…。確かにクラブやボールのお蔭でドライバーの飛距離は去年より出ていますけどね」。決して素直に喜べない理由が真板にはあるようだ。
年間3勝という自己最高成績ながら、いずれも2日間競技。「3勝しても(賞金ランキング2位の)崎山(武志)君を抜けないんですからね。シニアツアーは残り4試合。できれば3日間競技、2週間後の富士フイルムシニアで勝ちたいですね。それまでの2週間は体のケアに専念します。3、4日間競技になるとどうしても入れ込んでしまい、初日にオーパーパースコアにしてしまう。2日間競技のように初日から好スコアで発進できたなら」と真板。
試合の練習日、プロアマ大会、本戦以外はコースラウンドを控え、左膝痛を薬で抑えながら試合に出場し続けている。昨年大会では最終日首位スタートながら1番ホールでトリプルボギーを打って、自滅した。そのリベンジを果たせたが、「2日間(競技)の帝王」という冠を下すためにも、残りの今季シニアツアー4試合中3試合の3日間競技で、V奪取を遂げられるか。真板の納得のV笑顔を見たい!