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シニアツアー

<コマツオープン・FR>2打差に肉薄しながら敗れた高松の悔しさと嬉しさ

2016年09月10日

 フェアウエイからの2打目は、ピンまで98ヤード。風向きを読み、ピン位置を確認し、ロフト58度のサンドウェッジを選択した。クラブヘッドが気持ちよく振り抜けた。久しぶりの好感触が手から伝わって来た。イメージ通りの弾道で打ち出されたボールは、ピンに被さるかのように飛んで行く。

 ボールはピン奥に落下した。7番グリーンを囲んでいたギャラリーから「オオッ!」という歓声が上がる。バックスピンが効いたボールはピンに向かって転がり出す。「入れ、入れ」の声がやがて「入る、入るー」と変わり、大歓声と拍手が沸き上がった。「入った!入った!イーグルだ」。自分よりも大喜びしているギャラリーの姿と声が、何だか嬉しくなった。皆、自分を応援してくれているようにすら感じるほどの声援は有り難かった。

 首位のプラヤド・マークセンに3打差の3位タイで最終日を迎えた高松厚は、幸先良いスタートを切った。1、2番ホールで連続バーディーを奪った時点でマークセンとの差を2打に縮めた。だが、飛距離に勝るマークセンはパー5の5番ホールで、楽にバーディーを奪取し、3打差に戻された。

「マークセンは、本当に凄かった」--ホールアウト後、高松がそう口にしたのには理由がある。高松がピンに絡めるショットを放っても、まるで気にしない。高松の内側に着けるショットを打ったり、同じくらいの距離のパットを簡単に沈めたりしたからだ。

「前半9ホールは、自分で自分を褒めたくなるほどの良いゴルフができました。でも、それ以上に良いゴルフをマークセンに見せつけられた感じですかね。だって2打目をカップインさせてイーグルを奪った7番ホールで、マークセンもきっちりバーディー取っているし、前半は互いに33のスコアで、その差を縮めさせてはくれませんでしたからね」

 同スコアである限り、逆転はできない。逃げ切られる。ハーフターン直後の10番ホールでバーディーパットを決めた高松は、それでも食い下がった。マークセンの背中は見えても、決して捕えさせてはくれない。2打差のまま迎えた17番パー4ホール。悪い予感がしたわけではないが、追う立場の高松には不利なホールだった。

「練習ラウンドの時から1、2ラウンドすべて、17番ホールのティーショットを左に引っ掛けていたのです。その記憶が頭を過り、右方向に打ち出してしまいました」

 グリーンオンに3打を要し、カップインさせるのに3打を費やした。痛恨のダブルボギー。高松のシニア初優勝は、来週以降に持ち越され、通算11アンダー・4位タイの成績に終わった。「悔しさ80%、優勝争いを演じられた嬉しさ20%ですかね。優勝を賭けて戦う18ホールのゴルフは学ぶことも多いし、プレーしていた楽しかった。好調なゴルフが続いているので、来週も優勝争いに加われるように頑張りますよ」

 キャディーバッグを担ぎ、荷造りのために高松はロッカールームへと向かった。その後ろ姿は充実感に包まれているように見えた。素晴らしき敗者の称号を手にした高松の、今後の活躍を期待せずにはいられない。