愛用ドライバーのヘッドが割れて以来、半年の月日を要してようやく「試合で使える」ヘッドと巡り合った。その効果は絶大で、飛距離が戻っただけでなく、ショットの方向安定性も高まった。ショットメーカーの命であるアイアンショットをフェアウエイから打てる。ボールはピンに絡み出した。たとえグリーンを外したとしても得意の寄せとパットでパーセーブ出来る。
久保勝美は、ようやく本来のゴルフを取り戻し、大会2日間とも3アンダーの69をマークして通算6アンダー・首位タイで最終日を迎えた。しかも最終組。首位タイの冨永浩とキングオブシニア室田淳とのラウンド。「自ら崩れず、ボギーを打たない自分のゴルフに徹しよう」と誓ってスタートティーに向かった。室田がフロントナインでスコアを3つ伸ばし、通算9アンダーで単独首位に立った。久保は2バーディー・ノーボギーとし、通算8アンダーで喰らいついていた。
室田は9、10、11番ホールで3連続バーディー。久保は3打差をつけられたが、「ボギーを打たない」ゴルフに徹していたのだった。「無理にバーディーを取りに行ったら、必ずしっぺ返しを受けるんですよね。パーセーブに徹していたらチャンスは来る。それをモノにして行くのが僕のゴルフですから」。
12番ホールで痛恨のボギーを打ったものの、15番ホールで3つめのバーディーを奪取し、同ホールで室田がボギーを打った。その差は一打に縮まり、16番ホールで室田が3連続ボギーにしたことで通算8アンダーの久保は首位に並んだのだった。
同スコアで迎えた18番パー5ホール。「今まで一度も打ったことのないような会心の当たりが飛び出しました」。久保のティーショットはグリーンエッジまで194ヤード、打ち下ろしを含めてピンまで208ヤードの地点まで飛んでいた。ツーオン狙いの冨永、そして室田が先に打ち、ともにピン手前に乗せた。
「左足下りのライでフォローの風。5番アイアンを手にしたのですが、先に打った二人がショートめだったので、4番アイアンに持ち替えたのです」
痛恨のミスジャッジ。ピン奥にファーストバウンドしたボールはグリーン奥のラフに止まった。3打目はピンまで20ヤード。チップイン・イーグルを狙ったが「右傾斜と芝目によってボールはラインから外れてしまいました。僕の経験不足。優勝争いならではの距離感の物差しやクラブ選択がありませんでした。これがキングオブシニアとの差なんでしょうね。あの場面でイーグルパットを決め切るんですから、完敗です」
ファンケルシニアから日本シニアオープンまでシニアツアーは5連戦となるが、その1戦目で得た教訓を「すぐに生かしてみせます」と言って、久保はクラブハウスを後にした。その足取りは力強かった。