スターツシニアでシニアデビューしたものの、「ルーキーの洗礼」を受けて好成績を挙げられずにいた。そんな鈴木亨が、ようやく大爆発。1イーグル・6バーディーの64、8アンダーで単独首位スタートを切った。
「やって当たり前、勝たなければならないという重荷を勝手に背負っていました。ルーキーといってもシニアルーキーですから、焦ってはいけない。良い結果がでるように準備して、結果を残したい」と鈴木は気を引き締めている。
シニアツアーに参戦し、6ラウンド目でマークした64は、シニアでの自己ベスト。前試合の那須霞ケ城チャンピオンカップ最終日に67を出せたことで手応えを感じ、その後も北陸オープンに出場して試合勘を忘れないようにした。
「ハマった時には65を切ってくるようなスコアを出す印象を改めてアピールできました。僕らしいゴルフをもっとしたいですね。2位とは3打差ですが、シニアの先輩の胸を借りるつもりで、というよりも相手と勝負するわけではなく、目の前の一打、ホールと勝負するのがゴルフですから…。これからのシニアツアーにつながるようなプレーをしたい」と鈴木。
去年8月、父親の基之(もとゆき)さん、79歳が脳梗塞に襲われ、左半身不随で今は寝たきりだが、意識はあるという。かつては超がつくほど厳格な父親で、鈴木は笑った顔を見た覚えがないほど。ゴルフ指導も厳しく、試合後に正座させられ、ふがいないプレーをした際は鉄拳制裁を受けたこともあった。そんな父親の元へ見舞いに訪れると、涙を流す。父親の頬を伝う涙が、鈴木を奮い立たせる。
「来年の日本オープンは、僕がゴルファーとして生まれ育った岐阜関カントリークラブで開催されるんです。だから、ぜひとも出場したい。それが目下の大目標です。出場するためには日本シニアオープンで優勝するとか、レギュラーツアーで活躍して資格を得るとか、様々な方法がありますが、とにかく僕が活躍することが父に喜んでもらえると思うので、その思いは強いです」。
シニアツアー初優勝が、まずは最大の親孝行となる。その一勝が来年の日本オープン出場につながるはずだ。この日マークした8アンダーの好スコアは「末広がりの八」。鈴木は自らの手で未来を明るくして行く。