「先に入ったらおもしろいだろうな」と思った真板。
「入れたらリードかな」と思った羽川。
16番パー3のグリーン上で勝負が決まった。ともに通算12アンダーで首位に並んでいた。ティーショットで真板が5メートルに乗せた後、羽川はその内側、1・5メートルにつけた。上出が打ったラインを見て真板は「ライン的に似ていたので、参考になった」という。先に沈めた。それを見た羽川が外した。「リードのはずが、リードされちゃった。あれを入れ返さないとだめだったね」と振り返った。
ともに首位上出に1打差でスタート。インに入って羽川が10、12番でとって、12アンダーに抜け出す。この時点で真板、上出に2打差をつけた。「半分あきらめていたんですが、14番で6メートルぐらいのが入ってちょっと(流れが)変わりましたね」と真板はいう。続く15番では右2・5メートルを入れて追いつく。16番でリードし、17番で突き放す4連続バーディー。「真板は14番でいいのを入れたよね」と羽川も流れが変わったのを認めている。
最終18番パー5、真板は「長い(608ヤード)のでイーグルはないでしょ。池もあるし、自分はボギーにしちゃいけないと思っただけです」という。羽川が3打目でグリーンに乗せ、真板もピン左3メートルにつけたところで、寄ってきた羽川が「おめでとう」と声をかけた。「優勝できると思っていなかったので、まだ少し興奮しているんです」と真板は表彰式では少し硬くなっていた。
シニアデビュー後、2010年(フィランスロピー)2013年(コマツオープン)と3年おきに優勝をしてきた。今季は優勝争いになっても最終日に崩れてきた。「3年おきか、最終日だめか」と前日は言っていたが、3年おきの優勝の方に転んだ。「今年はショットが悪くないんで、優勝できるかなという印象はあった。内心、期待もしていた。飛んでいるしね」という。3年使っているドライバーが「シャフトも含めて合っている。正確な飛距離は分からないけど280ヤードぐらいかな」という。羽川も「3番ウッドで刻んでいたけど、僕のドライバーぐらい行くし、飛んでるよ」と話した。
問題はパッティング。「普通に入ればいいんだけど、普通じゃないから」と苦笑いする。プロ入り以来、所属契約を結んだことはなく「賞金だけで生活している」のが自負でもあるが、逆に「それで、このパターが入れば、と思っちゃう。それが入っていないのが最近でした」と、プレッシャーの中で苦しんだ部分もあった。中3、小3、小2と3人の娘がいる。お父さんはこれからも稼がなければいけない。「実は(2日目2位だった)スターツで娘と連絡して、だめだったんで、今は試合のときは一切連絡しないことにしているんです」と笑った。
今季は左ひざを痛めて「パキパキ鳴っている」と痛み止めを飲みながらプレーしている。「人よりもこういうのとの戦いになっている」といい「この年だし、もうぐっとうまくなることはないでしょう。できるだけ、落ちるのを緩やかにして、家族のためにもできるだけ長くやりたい」という。夏場以降、高額賞金の大会も続く。「優勝できてよかった。気持ち的にも、残りもやるぞって思えますよね。今年はもう1つ、勝ちたい」。めったに口にしない「勝つ」という言葉を言わせるだけのうれしさ、充実感が、3年ぶりの優勝にはあったようだ。
(オフィシャルライター・赤坂厚)