天候は曇り、気温23・7度ながら、風速6.4メートルの風が吹き、体感気温は10度台。半袖姿では寒さを覚えるほどの強風が、選手たちを苦しめた。グリーン上のピンフラッグはうなり続け、ピンは弓なり状態のままだ。厳しいコンディションによって、アンダーパースコアをマークしたのは4選手。
「アゲンストだったから、ピンまで110ヤードの距離を8番アイアンで打ったのに、20ヤードもショートしてしまった」。「パターを打つ際に自分の体が風の影響を受けて動いてしまい、3パットばかり打ってしまった」。そんな愚痴めいた言葉がホールアウトした選手の口から次々にこぼれ出る。そんな選手たちの横をご機嫌の笑顔で擦り抜け、スコア提出所に姿を現したのは「コング」の愛称で知られる飯合肇だ。
「この風の中では、最高のゴルフでしょ」と初日の首位発進に飯合の口が滑らかになって当然だろう。
アウトコーススタート2番組・7時50分スタート。朝から強風が吹き荒れていたが、2番ホール(421ヤード・パー4)でパーオンを逃したものの、3打目をチップインバーディーとして、好調の波に乗る。4番ホール(376ヤード・パー4)ではパーオンショットを1ピンに着けてバーディー。6番ホール(424ヤード・パー4)では8メートルのバーディーパットが音を立ててカップインした。
「前半のピンチらしいピンチは2番ホールかな。でも、チップインで切り抜けられたからね。後半は上手くしのげたよね。11番ホールでボギーが先行したけど13番ホールで5メートル、15番ホールではエッジから6メートルのパットが入ってくれた。17番ホールの3パットがちょっと悔やまれるけど、初戦初日としては最高でしょ」と飯合。
昨年12月15日から奥さんと一緒にウォーキングを始めた。一日4キロ以上、5000歩がノルマ。寒い日には1万歩も歩き、足腰を鍛えた。「60歳を過ぎたら筋肉痛になるようなトレーニングはしない。カミさんと一緒だとサボれないし、俺のやる気をカミさんも感じ取ってくれるからプラス効果が働く。
あと、午前中はジャンボ(尾崎)の所でボールを打ち込んで来て、2月のタイ遠征では感じが良かったんだ」
アンカーリングのルール施行もあって、昨年9月から長尺パターに分かれを告げ、通常パターに戻してパットするようになった。それが理由ではないが、シード落ちを喫し、今年に賭ける思い、「開幕戦からやってやる!」という思いは強まった。
「春先は調子良いのに初日はいつも駄目だよな!ってジャンボに言われて来たので『初日やっときました』と言いたい」と飯合は胸を張ってみせた。
優勝争いは14年のコマツオープン以来 09年の富士フイルムシニア選手権以来の優勝となる飯合は「勝つ負けるではなく、60台のスコアをシニア元旦(ツアー初日)に出せたのは励みになるし、嬉しい」と明言は避けた。
この日、同じ組でラウンドした芹澤信雄は「パットは入っていたし、ドライバーショットがしっかり飛んでいた」と飯合のゴルフをそう評していた。
1日5000歩が奏効し、7年ぶりの復活V、シニア通算5勝目へ。明日の最終日に強いコング飯合が帰って来る。それを最も期待しているのは、飯合自身に違いない。