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〔Report/FR〕会心のバーディーフィニッシュ!高木が初代覇者の夢を叶える

2021年10月22日
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 2位に3打差を着けての単独首位で迎えた最終日。高木亜希子は、明確な目標を立ててスタートティーに立った。「3打差を守ろうとはしない。5打差に引き離すつもりでプレーしよう」。守りのゴルフでは、弱気になってしまう。それを避けるためだった。

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 前日はバーディーを先行させたものの、その後はボギーが続いてスコアを落とした。

その流れを切れないままのプレーを最終日も繰り広げる。アウトコースからスタートし、4、6、8番ホールでボギーを叩く。前半は3オーバーの39。気持ちに焦りが生じ始める。残り9ホールをうまく乗り切ったならと望みを持って後半に臨む。10、11番ホールでパーをセーブ。12番パー4ホールでピンチを迎える。パーオンを逃しての3打目はピンまで40ヤード。それを50センチにピタリと寄せ切り、ボギーを回避したのだった。続く13番パー5ホールでは、パーオンはしたものの4打目のバーディーパット距離は15メートルもあった。カップまで2・5メートルにショートする。再び迎えたパーセーブのピンチ。それでも高木はパーパットをねじ込む。

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「残り5ホール。今までどおりボギーを抑えたら勝てる。セーフティーを最優先させてプレーしよう」。高木は初代覇者になることを目指していた。プロテスト合格を目指して来たが、夢は叶わなかった。PGAが女性会員を募ることを知り、自分のゴルフを磨くことから、他人のゴルフ力を向上させることにシフトする決断を下した。それでも、試合という独特の緊張感を楽しみたい思いは消えていなかった。

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 迎えた最終18番パー5ホール。スコアを伸ばせなかったジレンマを感じていた。「最終ホールだからこそ、バーディーを奪ってみせる」。3打目はピンまで残り87ヤード。ピッチングウェッジで放ったショットはピンに向かって真っすぐに飛んで行った。ピン手前2メートルのバーディーチャンスを作り上げ、しっかり決めてバーディーフィニッシュ。「会心の締めくくりが出来て良かったです」。緊張していた表情がようやく柔和になった。2位に8打差を着ける通算7オーバーでの優勝を高木は、こう話す。「初代チャンピンであることが、これから名誉になるように女性会員が増え、そして来年は大会連覇をしたいです」。

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 優勝インタビューで高木の視界に優勝トロフィーが入った。「あんなに大きいトロフィーなんですか?」と声を上げた。女子選手権は、その隣のクリスタルトロフィーだとスタッフから教えられて苦笑い。「女子も大きな優勝トロフィーになるように、私たち女性会員がドンドン活躍していかなければならないと改めて感じます。ゴルフを教え始めたばかりですが、お客様の喜び様が自分の喜びになっています。これからも教え方も自分のゴルフも向上させていきます」。高木の優勝を祝うLINEメッセージ着信音は鳴りっぱなしだった。

 優勝インタビューを終え、椅子から立ち上がり、再び優勝トロフィーに視線を向けて、小さな声で呟いた。「いつか女子選手権もトロフィーに変わった時、私の名が一番上に刻まれますよね」。初代覇者の実感が沸いた一瞬だった。

(PGAオフィシャルライター 伝昌夫)

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