今年のティーチングプロ選手権大会は120名が参加しているが、そのうち50歳以上は19名と全体の2割に当たる。ティーチングプロ選手権は50歳以上の「シニアの部」、60歳以上「グランドの部」、68歳以上は「ゴールドの部」と年齢別カテゴリーが用意されているが、選手権出場を選んだ19名それぞれには、年齢関係なく出場を決めている理由がある。
なかでも今年50歳という節目を迎え、ティーチング選手権本戦に出場を決めた渡辺龍策にとって2023年は、ティーチングプロ活動1年目であり、シニアツアーデビューを果たした記念の年でもある。
シニアツアーデビューを果たしたのは、10月上旬に行われた日本プロシニア。15年ぶりの大舞台に興奮したようで「すっかり舞い上がっちゃいましたね」と大事な初日に83を叩いたと笑いながら振り返る。ふっきれた第2ラウンドは73でようやく冷静にプレーができたといい「シニアは最高に楽しい時間でしたよ」と予選落ちも悔しいはずだが、充実したひとときを過ごしたようだ。
そして今週のティーチングプロ選手権を迎える。研修会、2次予選を勝ち抜いてこの出場を決めた。渡辺は50歳以上の「シニアの部」にエントリーする選択肢はなかったという。「若いっていいですよね。たくさんの刺激がある。それにティーチングプロB級の講習会を通じて、こんなにレッスンの世界が面白いっていうことが分かりました。研修会、2次予選会で知り合ったティーチングプロの方々はスイングも綺麗だし、スコアも作れる。ゴルフの世界に入って35年ですが、ティーチングプロの新しい世界を通じて、ゴルフのやる気があがりましたよ」。
渡辺はこれまで数々の試合に挑戦し、魅せるプレーを意識して取り組んできた。しかし3年前にコロナ禍のゴルフブームの中、初心者や若いゴルファーがコースに来場する状況で「今まではゴルフ経験者のレベルアップを目指したレッスンを我流でやってきましたけど、ゴルフの入り口という部分のレッスンがどうも苦手で。ゴルフ層が変わってきたのと、人からレッスンを頼まれる需要の大きさを感じたんです。自分もゴルフの原点に返って基本を学ぼうと思って、ティーチングプロB級取得を目指しました」と言い、「魅せるプロ」から「教えるプロ」への興味が深まった時期だった。
「30年以上ゴルフやっていますが、今はゴルフを1から始めているというような新鮮な気持ちで楽しんでいます。ゴルフはグリップから始まるんですよ。私も教える立場になって、我流のグリップから教本のグリップに真似たことで、無駄な動きもしなくなったと感じていますし、理論的にもしっくりと来ていることをアマチュアの方たちにも身を持って伝えられます」。人生の半分以上、大厚木カントリークラブを所属としてきた渡辺は、プロゴルファーとして新たな気持ちで活動をしている。
「この選手権でコースに負けないように、自分のゴルフを実践したいです。お世話になっている大厚木の方々には、たくさんの応援をもらっていますからね」と頬を緩ませた。50歳という節目。シニアデビューを果たし、ティーチングプロ選手権でもデビューするタイミングがやってきた。魅せる・教えるプロゴルファー渡辺の試合運びにも注目したい。