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ティーチングプロ

〔選手権/1R News〕河野翔太が経験したまさかの「盲腸」はベストパフォーマンスを披露するきっかけに。首位1打差2位タイ

2023年10月24日

「今日は90点の評価です。ようやく復帰したばかりで、よくスコアにまとめられたかと」と安堵したのが河野翔太(かわのしょうた)。大会直近の一週間、なんと盲腸で苦しんでいたという。その復帰戦となったのがティーチングプロ選手権。想定しなかった事態を乗り越えたエピソードを持ち合わせていた。

 盲腸という診断を受けた10月11日。その前日である10日はPGAが主催するフィランスロピー活動の「ISPSPGA障がい者ゴルフ大会」に河野はレッスンプロとして障がい者のプレーサポートに初めて携った。担当になった下肢障害の選手には、オリンピアンの山本篤が出場していて「とにかくゴルフを楽しむエネルギーの強さに衝撃を受けました。障がい者選手のモチベーションの高さに、刺激しかありませんでした」と振り返る。ゴルフはハンディのあるスポーツでありながら、さらにレベルアップを図る選手の姿に、河野は強い感銘を受けたという。

 初めて経験する障がい者スポーツの現実に河野の身体は共鳴したのか、障がい者ゴルフからの帰路で強い腹痛に見舞われた。「すごいエネルギーがあった大会だった」と目を丸くした。病院で受けた診察は「盲腸」。手術を受けることには抵抗があったが、運よく薬で痛みを散らすことができた。しかしゴルフは厳禁。申し訳ない気持ちでレッスンを休講にし、この選手権に出場できるよう必死で体調を整えてきたのだった。

 急変を乗り越えた河野の第1ラウンドは、アウト1番ホールからスタート。1、2番で連続バーディーと幸先の良いスタートを切ったが、3、4番でボギー、ダブルボギーと躓いてしまった。ただ練習ラウンドを通じて「5番と7番はキーホールになるので、スコアを良い流れにする可能性がある」と確信。結果2ホールはパーセーブ。続く8番でバーディー奪取に成功し、前半をパープレーで終えた。後半に入り、12番から怒涛の3連続バーディーとスコアを動かす。ミドルパットと言われる6メートルや10メートルが入ってくれたこともあり一気に上位グループへ。「流れってあるんですね。こういうのがプロのメイクチャンスだという体験に感じます」と振り返り、気づけば首位1打差2位グループに入っていた。

 埼玉出身の河野は、埼玉帝京平成高校ゴルフ部を経て城西大学へ進学。卒業してから「ゴルフを極めたい」と高麗川カントリークラブで腕を磨いてきた。現在は神奈川県湘南にあるゴルフスクールでレッスンに携わっており、大勢のゴルファーのレベルアップを目指して活動中である。「お客様からは『これ以上体調こわさないで』という声の方が多くて」と苦笑い。恐る恐る練習を初めたさなかに「障がい者の方のプレーが、私のやる気を掻き立てました」というほど、それは前向きで刺激的な出来事だった。

「まさかの盲腸ですよ(笑)。その中で自分には、新しいゴルフの視野が持てました。それはゴルフ技術を改善するための貴重な経験でした」と河野は安堵すると同時に、自分のゴルフスタイルを見直す大事な機会でもあったのだ。「18年ゴルフをやってきた中で初めて『優勝』という最大のチャンスがやってきました」とうなずいた。独立してレッスン場を設け、新たなな人生を切り開いてきた河野が、最終ラウンドで最大のパフォーマンスを披露する。