最年長56歳の松原輝雄(A級)が、若い選手たちに交じって挑戦する。
「11月7日で57歳になるんです」と笑う。この大会は「インストラクター選手権」という名称だった1999年から毎年のように予選から挑戦している。過去最高は3位だったという50歳以上のティーチングプロシニア選手権も選択できるが「埼玉県の研修会で一緒の僕より若い仲間たちが『こっちに出ましょうよ』って誘われて、ずっとこちらに挑戦している」という。
今回も2次予選を突破しての出場。元気な理由を聞いた。
「いま、ナショナル埼玉GCに日曜日にバイトに行っているんです。バッグの積み下ろしとか玄関番とか。時間の合間に練習させてもらっていますので、感覚がつかめているからじゃないでしょうか」。
ティーチングプロとしては、月~土曜日にコナミスポーツ、所属先の和銅ゴルフガーデンで60人以上の生徒を教えている。
「実は農業をやっているので、体感が鍛えられているのかもしれません」。埼玉県内の妻の実家の農業を受け継いだ。自らトラクターを運転し、田んぼと、畑ではネギ、ジャガイモ、キュウリ、トマト、カボチャなどを作っている。「鍬を振って耕したりしているのがいいのかもしれませんね」。1週間全部ゴルフで埋まっているのに、いつ農業を?「レッスン合間に少しずつやったり。365日、休みなしです」と笑う。相当、忙しい生活だ。
その甲斐あって、56歳の今も飛距離は落ちていない。「この前、レーザーで測ってくれたことがあって『286ヤード飛んでますよ』と言われたんです」とニコニコした。
設計会社でサラリーマンをしていた20歳の時に会社の先輩からゴルフに誘われて始めた。24歳までレッスンを受けて会社を辞め、研修生に。プロテストに挑戦し続けてきたが「最終まで行けなかった」という。
TCPの資格は1996年に取得したが「いまだに(トーナメントプロを)狙っているんです(笑い)。2年前もプロテストに挑戦しました」。理由は「一度自分が目指したものですから、曲げられないんです。意地ですね」と笑った。シニアツアーの予選会にも挑戦しているが、こちらも最終予選に進めていない。それでも試合に出ることを大事にしている。
「お客さんに自分の体験をフィードバックできるから、試合には出たいんです。技術面はもちろん、精神面も出てみないとわからないので」という。例えば「スイングのイメージに不安がない時は、朝の練習場にあえて行かないと、教えることもあります。自分も経験しましたが、勇気を出してみたらうまくいったという方も多いんです」と、テストや予選会を含めて、試合に挑戦する意義を見つけている。
埼玉で活躍するプロ仲間と、和気藹々で練習ラウンドをこなした。「グリーンが止まりすぎて、自分にはもっと転がったほうがいいんですが…。短いパットが難しい。ティーショットを刻むホールが思ったより多いので警戒してやらないと」と話した。
「まずは自信をもって、1ホール1ホール大切にします。順位はあとからついてくる。パープレーを目標にやります」。農業で鍛えた最年長の挑戦も、この大会ならではの見どころだろう。
(オフィシャルライター・赤坂厚)