アウトコース16組、インコース15組でスタートした第1ラウンド。アウト、インコースともに9組以降の選手のスコアが伸びない。グリーンは好天と風によって、さらに硬く引き締まり、速さが増したからだった。アウト・インともに9組以降でアンダーパーのスコアをマークする選手が出ない中、「1オーバーの好スコア」をマークしたのが、今大会最年長64歳の島村豆至天だった。
3バーディー・2ボギー・1ダブルボギーの73。すでにホールアウトした選手たちが、そのスコアを耳にし、驚きの声を上げる。「午後に入って、さらに難しくなっているこのコースで…」と口を揃える。しかし当の本人は「そんなに良いスコアですか?今日はボチボチのゴルフでしたけど」とそれほど喜んではいなかった。
40代の時には本大会に出場していたが、50歳を迎えてシニア入りしてからはPGAティーチングプロシニア選手権大会にだけ出場していたという。15年ぶりに出場したのは「日程が合った」からだ。「若い選手たちは皆飛ぶし、ショットに力強さがありますね。弾道が私とは全く違う。ラウンド中はギャラリーになっていましたよ(笑)」。
だが、試合となれば「上がってナンボ」だ。ティーチング歴30年以上を数える島村は、これまで5000人以上の生徒たちをレッスンして来た。練習ラウンドを終え、目標スコアを通算イーブンパーに設定した島村にとって、この日のゴルフはスコア「借金1」。「明日は60台スコアを目指しますよ。練習しているからこそ、この大舞台に出られる。生徒には練習の大切さを常日頃から教えているので、そのお手本になる結果を残したいんです」。
キッパリと言い切ると、島村は練習グリーンへと向かった。練習は嘘をつかない。それを実証する気概が後ろ背中に滲んでいた。