10年大会覇者の加瀬秀樹(57)は前週のセヴンヒルズKBCカップで6打差を逆転して優勝した。14年ISPSフィランスロピー以来、シニアツアー通算3勝目を飾ったのだ。2週連続優勝の期待が高まる。
「サミットゴルフクラブで開かれるようになってからは、良い成績を出していないからね。残されている(優勝チャンス)としたら、勢いだけですよ」と細い目を一段と細めながら、試合直前の意気込みを話した。
セヴンヒルズKBCカップ最終日では、上り3ホールでの3連続バーディーでフィニッシュ。18番パー4ホールは平均ストローク4・658で難易度1位だったにもかかわらず、バーディーを奪った2打目の手応えもウイニングパットとなった2メートルのファーストパットの感触もまだ体に残っている。
「ドライバーショットが当たって、2打目は上りを入れてピンまで137ヤード。たとえショートしても構わない。ピンをデッドに攻めるしかない。勝負の一打だったね。獲りに行って獲れたバーディーだから、気持ちのいいゴルフとしか言いようがないよね」。
シニアオープンから長尺パターに戻し、新たな打法も体に染みついて来ての復活優勝だったと加瀬は振り返る。アンカリング禁止によって一時は長尺パターを手放した。今季は優勝争いに何度も加わったが、最終日の勝負所でショットが曲がったり、パットを外したりしての脱落を繰り返していたのだった。ショットはクラブの変更で安定し、パットは長尺パターでの新たな打ち方=ボール1個分右足寄りにセットし、肩を積極的に動かしてストロークすることでスムーズにヘッドが動き、イメージしたラインにボールを乗せられるようになったのだ。
「長尺パターは尾崎直道さんやベルンハルト・ランガーのように右手主体で打つタイプと、アダム・スコットのように肩主体のショルダーストロークタイプがある。長尺パターに換えたシニアオープンで一緒に回ったのが(長尺パター使用の)羽川(豊)さんと直道さんだったので、よ~く見て打ち方を研究しましたよ。米山(剛)や金(鐘徳)さんにも聞いたりもしましたよ」
巡り合わせの妙なのか。長尺パターを手にして、パットのプレッシャーも激減し、ショットはさらに安定感が増した。そして、3年ぶりに勝利の美酒を味わった。決して勢いだけではない。勝つための準備はすべて整っての優勝。今週も「ショットもパットもまだ好調だよ」と加瀬は小声でそう漏らし、プロアマ大会のホールアウト後、練習グリーンでパットに磨きを掛けていた。
ストップ・ザ・マークセン。筆頭は加瀬で決まりだ!
(PGAオフィシャルライター 伝昌夫)