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シニアツアー

<FR・ストーリー>スイング改造とハリ治療を続け、日本タイトルを掴んだ米山「あっぱれです」

2018年10月07日
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 57回目の歴史を刻むトロフィーを、米山剛(53)は感激しながら見つめた。「歴代の名手の方々の名前が刻んでありました。信じられない気持ちです。自分の名前が刻まれる。感無量です」。シニア3勝目、レギュラー時代も手にできなかった日本タイトルをつかんだ。

 終わってみれば「完勝」だった。日大の2年後輩の鈴木亨が2打差、シニア圧倒的な強さを誇るマークセンが5打差にいた。「2打差なんてあってないようなもの。マークセンは何をするか分からない。追いかけるような気持ち、攻めるをモットーに今日1日やったことがうまくいったと思う」と振り返る。


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 1番パー5の第2打が左サイドバンカーの左にいったが、バンカー越えのロブショットが1メートルについてバーディー発進。2番では2メートルにつけて、追う選手たちに見せつける連続バーディーでスタートした。それでも、同組の鈴木が好調なショットで追いすがってきた。1組前ではマークセンが5番のOBで後退したが、代わってウィラチャンが快進撃で追いかけてきた。ただ、気持ちに余裕があったという。「攻めに徹することで、プレッシャーが逆に半減するんです。リラックスしてプレーできた気がする」といい「ギャラリーの方と話したりして、打つ時だけ真剣になる。それが僕にとってはプレッシャーをかけ過ぎずにできるんだと思います」とも。

 12番で通算20アンダーに乗せた直後、13番でティーショットを左に曲げた。運よくがけ下に落ちずにラフで止まり、「前が開いていたので」とグリーンに乗せられた。2打差の鈴木がラフからボギーにし、ピンチはパーで収めたのが利いた。14番で鈴木がまたボギーにした時点で4打差、楽になった。ウィラチャンが17アンダーにしたことを知っていた17番、6メートルを入れてガッツポーズが飛び出した。大会記録(2002年陳志明=カレドニアンGC)に並ぶ通算21アンダー。このコースでの開催では、2016年マークセンの20アンダーを更新した。「あっぱれだと思います」と自分をほめた。

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 シニア入りする5年前から取り組んだスイング改造が、ここにきて結実してきた。元々「オーバースイングでカットに打って、行く先はボールに聞いてくれという感じだった」が、谷将貴プロコーチの下でスクエアなスイングプレーンをつくってきた。「狙ったところに打てる回数が増えてきた感じです。レギュラーの時の優勝争いでは不安で自滅していたけど、今は『あそこに打ってやろう』と前向きになれた」と、スイング、球筋の安定が気持ちの支えになっている。

 体調管理も、芹澤信雄に紹介された静岡・三島の治療院に毎週通い、ハリ治療を受けている。「どこか痛かったり、疲れていると感覚にずれが出る。イメージ通りに振れれば、イメージ通りの球を打てると思うんで、治療を欠かさない。それで大きなけがもなくやってこられたんだと思います」と、体のメンテナンスにも気を配ってきた。

 この優勝で、来年のレギュラーツアー、日本プロの出場権を得た。「そうですよね、ちょっとやってみたいですね」と目を輝かせた。会場の指宿GCも「優勝した(1999年カシオワールドオープン)コースですから」と、やる気は満々だ。

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賞金ランク2位(2235万円)に浮上した。優勝すれば賞金王確定の可能性があったマークセンを止めた。まだ4600万円余りの差はある。「賞金王? ムリ。マークセン(相手では)、ムリ」と笑ったが、賞金ランク上位には入りたい。4位以上で全米プロシニア、2位以上だと全米シニアオープンにも出場できる。「お金かかるんですけどね、海外メジャーに行くのは(笑)。でも、室田さんは海外に行って、日本で優勝している。今回の優勝も今年海外メジャーを経験したご褒美だと思う」という。自分に投資するのも悪くない。それが次につながっていくだろうから。

(オフィシャルライター・赤坂厚)

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