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シニアツアー

<FR>中山正芳が清水とのプレーオフを制し初優勝

2020年10月11日
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 「日本プロゴルフシニア選手権大会 住友商事・サミットカップ」の最終ラウンド。2位スタートの中山正芳(52)、清水洋一(57)が通算9アンダーで並び、プレーオフに突入。1ホール目をボギーとした清水に対して、パーパットを決めた中山が嬉しいシニアツアー初優勝を遂げた。初日から首位を守っていた比嘉勉(57)は5アンダー4位タイで大会を終えた。

 どちらが勝っても、ツアー初優勝が日本タイトル。そんなしびれるプレーオフを制して、中山が通算9アンダーで並んだ清水を1ホール目で破り、レギュラー、シニアを通じて初優勝を公式戦で飾った。  

 ともに首位比嘉を2打差で追って通算6アンダーでスタートした。比嘉を含めて最終組はツアー優勝未経験。緊張感漂う中で序盤からチャンスを作るが、パッティングを決めきれずにホールを重ねた。「比嘉ちゃんがあまりよくなかったので、僕と中山のマッチプレーになると思っていた」と清水は言う。

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 スコアが動いたのは5番。清水が先にバーディーを奪う。直後の6番で比嘉がボギー。7番で2メートルを決めた中山が、9番でも2メートルを沈めて8アンダーに抜け出す。12番で8アンダーに追いついた清水。比嘉が13番で落として優勝争いから遠ざかる。やはり中山と清水で、マッチプレーの様相になった。

 17番、清水が第1打を左ラフに打ち込み、フェアウェイに打った中山は「勝負と思った」と8番アイアンでコントロールした第2打、3メートルにつけてバーディーを奪い9アンダー、1歩抜けだした。最終18番、第1打は中山が右の斜面のラフ、清水は中央にバンカーに入れた。

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  中山 “セカンドは5番ウッドで行けると思って持っていったんですけど、練習ラウンドで同じところからチョロした記憶がよみがえってきて刻もうと。メンタル弱いんです。5番アイアンに替えました。”

  清水 “今日はティーが前になっていたので、バンカーに届くとは思ったけど、中山が風で右に流されたので、僕も流されてくれと。でも、まっすぐ行ってしまった・・・。”

 2人とも第2打を刻んだが、清水は仕方なく、中山もある意味仕方なく。先に清水が5メートルにつけ、中山は「失敗した」というアプローチがその少し内側。清水が外せば、中山は2パットで勝つ状況で、清水が入れた。土壇場で9アンダーに追いつき、バンザイ。

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  清水“プレッシャーをかけたとは思いました”

  中山“プレッシャーはありませんでした。清水さんは百戦錬磨。打つ前に、入れられたらしょうがないと割り切っていました。”

 中山が外した。悔しそうな表情でなかった。笑顔がのぞいた。

 同じ18番で行われたプレーオフ。先に打ったのは中山。正規の18番と同じ右ラフに打ち込んだ。清水は、またドライバーを持った。今度は左に打ったが、傾斜を転がってまたもバンカー。正規の18番と同じに状況になった。違ったのは、中山の選択だった。

  中山 “正規の18番より10~15ヤード前に行っていたんです。球は少し沈んでいたけど、ユーティリティーで行けると思った。”

 この選択が功を奏す。ラフから打ちだしたボールはグリーン手前のバンカーを超え、グリーンに転がった。2オンに成功した。フェアウエーに刻んだ清水が今度はプレッシャーを受ける。

  清水 “中山は2パットで行く。122ヤード、しっかり打ってと思った分、体が浮いてしまった。情けない。勝負あり、の感じでした。”

 清水の第3打はグリーン右に大きく外れる。「狙うしかなかった」というアプローチはピンを4メートルほどオーバーした。ところがプレッシャーがまた入れ替わる。

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  中山 “20ヤードぐらいのイーグルパットでした。手が震えて打てなくて。”

 中山は3メートルもショートする。清水が入れ、中山が外すと2ホール目に行く。勝敗の振り子が何度も振れた。清水のパーパットが外れ、ここでやっと、振り子は中山に振れて、止まった。バーディーパットを打ち切れなかったのは「情けない」というが、中山が3パットのパーでシニアプロ日本一の座をつかんだ。

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  清水 ”ホント、チャンスと思ったんですけど。18番でドライバーを2回とも持ったのは、セカンドでいいところから打ちたいと・・・。プレーオフは3番ウッドもあったのかなあ。実は先週、この大会で優勝する夢を見たんです。家族には正夢にするって行ってきたんですけど。やっぱり僕は盛り上げ役なのかなあ。くじけず、優勝を目指していくしかないです。”

 表彰式の音が聞こえてきた。清水は「いいなあ」をポツリ。振り子が自分に止まるまで、挑戦するしかない。

 中山は泣きそうになっていた。優勝インタビューで、一緒に行動して教えを受けている高橋勝成、寺西明の名前が出たとき。「実感がないですけど、うれしいです。あ、泣きそうです。自分が一番びっくりしています。まさか、まさかです」。目をウルウルさせながら、初優勝の気持ちをストレートに伝えた。練習日に高橋から「ショートアイアンをしっかり振るようにしたら」とアドバイスを受けた。「フワッと打つタイプだったので。体幹を使うようにということでした。それが今回、はまったんです。寺西さんからはパッティングでフェースが開くから右ひじを張るようにしたらといわれて。2人には感謝しかありません」という。それでも「2日目、最終日ノーボギー。少しはうまくなったのかな」と笑った。

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 東京生まれたが、すぐに北海道の栗山町へ移った。中学時代にはスキーの1級を取り、野球もやっていた。ハンディ2の父に初めて連れて行ってもらったゴルフで「止まっているから易しいと思ったら、ティーアップしたボールを3回空振りした。悔しさから中学卒業後にゴルフの道を選び、内田袈裟彦に師事。千葉に来て、23歳でプロテストに合格した。レギュラーツアーでの実績はない。シニア入りし、同じ北海道の高橋と行動を共にするようになった。

 「高橋さんからは、今朝もLINEがきて『自分を信じて頑張れ』と。日本シニアオープンに優勝した寺西さんには『次は中山君だね』と言われていて。2人にはありがとうございますしかありません」。

 優勝を決めたグリーンサイドで、豪快に水をかけて祝福した寺西は「次は高橋さん」と笑った。21日からは70歳の高橋が挑戦する日本プロゴルフゴールドシニア選手権大会が始まる。仲間から3人の日本タイトルホルダーが誕生するかもしれない。

(オフィシャルライター・赤坂厚)