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<番外編>ゲンの良い舞台を作るグリーンキーパー・ひとみさんの想い

2018年08月30日
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「とても不思議なんですけど、イベントがあると台風が来たり、大雨に見舞われたりする。何としてでも出場選手の皆さんにフルラウンドして頂きたい。その一心でコース管理、メンテナンスに努めているんですけどね」。

 最終プロテストの開催コースである登別カントリー倶楽部のグリーンキーパー平川ひとみさん(56歳)は、ガラス窓越しに降り止まない雨を見つめた。

 第3ラウンドは悪天候によって午前9時30分に競技中止が決まった。前夜から降り出した雨は、一晩明けても止む気配がない。早朝からコースメンテナンススタッフの陣頭指揮を執る。自らもグリーンへ足を運んだ。その苦労も水に流れた形となった。

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 知人からゴルフ場造成仕事のアルバイトを依頼された。今から28年前のことだった。初めて足を踏み入れたゴルフコース。それまでゴルフ場には、まったく縁もゆかりもなかった。眼の前に広がる緑の芝生。「とても綺麗だったんです。こんな所で仕事をずっと続けられたらと思いました」。その5年後には社員登用され、別のコースへサブキーパーとして配属されたという。

「いきなりサブキーパーとなり、肥料や芝、グリーン管理の仕方を覚えなければ行けなかった。今だから『大変でしたよ』って笑えますけど。その後、洞爺レイクヒルリゾートのキーパーに就任し、2年勤めました。責任ばかりドンドン増えて行きましたね」。

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 そして登別カントリー倶楽部のグリーンキーパーとなり、6年の月日が経つ。「このコースは雨が多い地域柄からグリーンにしかスプリンクラーがありません。グリーンに水が浮くと芝芽が減り、芝自体が弱ってしまい、赤茶ける。お盆前後が芝の夏バテでその症状が出やすいのです」と平川さん。毎年、全ホールが水浸し見舞われることがあるそうだが、「今年はそれがなくて喜んでいたのですが、よりによって最終プロテスト3日目に大雨とは…。イベント開催のジンクスですかね」。

 グリーンの状態が良くて当たり前、メンテナンスが少しでも悪いと苦情が舞い込む。グリーンキーパー業は気苦労の多い仕事だ。2016年の日本女子プロゴルフ選手権終了後には、原因不明の病を患い、激ヤセしたという。肉体的に、精神的疲労が溜まりに溜まったからだった。それでも、キャディーさんから「今日のグリーンは最高だったとお客さんが大喜びでした」と告げられた瞬間、日頃の苦労が一気に吹き飛び、キーパー冥利に尽きる。「だから、キーパー仕事を続けていられるんですよ」と平川さんは屈託のない笑顔を浮かべる。

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「登別CCはとても縁起の良いコースだと思っています。女子プロ選手権覇者となった鈴木愛選手は賞金女王に昨年なりましたし、前回(2015年)のプロテストトップ合格の時松隆光選手は、今や賞金王争いを繰り広げています。ここでトップを取れば、ツアーの頂点に立てるんです」と平川さん。「登」別CCは、プロゴルファーの「登」竜門だと言い切った。 

(PGAオフィシャルライター 伝昌夫)