第1ラウンドから73・72・73とオーバーパースコアしか出せずに迎えた最終ラウンド。通算5オーバー・69位タイの大城康孝は攻めゴルフを決意し、スタートティーに上った。前日終了時点で46位タイのスコアは2オーバー。合格ラインの50位タイに食い込むためには「通算2オーバー」までスコアを縮めるしかない。
入れごろ外しごろの距離のパーパットを「執念でねじ込み続けました。技術とか打ち方とかは度外視です。とにかく入れなければボギーになってしまいますから」と大城は話した。
それでも2ボギーを叩く。だが、チャンスはモノにした。3バーディー。スコアを一つ伸ばし、通算4オーバーで迎えたインコーススタートの大城にとっての最終9番パー5ホール。ティーショットはフェアウエイ右ラフに捕まった。池越えのピン位置まで残り175ヤード。7番アイアンを手にした。素振りを1回、2回と繰り返しながらピン方向を見た。
(何としてでもツーオンだ。そしてイーグル奪取。最低でもバーディーフィニッシュなら、通算3オーバーにスコアを戻せる。そのスコアなら、もしかすると50位タイ以内に潜り込めるかもしれない)。
大城は通算5オーバーでスタートした同組の3人がスコアを落としていたこと、雨脚が途絶えずコースコンディションが良くなかったことから、合格ラインが下がっているに違いないと考えたのだった。
4回目のプロテスト受験。1、2回目は2次プロテストを落ち、3回目は最終プロテストで落ちていた。「27歳という年齢が年齢だっただけに、このプロテストを最後にしようかとも思って挑んでいました」。
大城は腹をくくり、7番アイアンでピンをデッドに狙って打った。(飛べ!池を越えろ!)と心の中でそう絶叫した。砲台グリーンだったことで、ボールが池を越えたことはわかったが、グリーンを捕らえたのか外したのかは見えなかった。「乗っていなくてもグリーン周りのどこかにはあるだろう」と思い願いながら歩を進める。グリーン上には同伴競技者のボールはあったが、大城のボールの姿は見当たらない。(どこだ!どこにあるんだ)不安が次第に強まって行く。カップの2メートル手前に大城のボールマークはあった。(もしかして…)。カップを覗くと、そこに大城のボールが入っていた。ショット・イン・ダブルイーグル。期していた結果を上回るスコア、アルバトロス。「一気に3打も縮まったんですよ。最終日最終ホール、最後のショットがカップインだなんて、信じられない」。大城は「奇跡的の一打」で通算1オーバーにスコアを伸ばし、39位タイでフィニッシュ。大逆転でプロテスト合格を手にした。
「こんなことって本当にあるんですね。値千金の一打です。帰りは交通事故に遭わないように気をつけます」。スコアカードを何度も見直し、チェックし、提出し終えると仲間が取り囲んで祝福してくれた。大城の体は、感激の震えがまだ収まってはいなかった。
(PGAオフィシャルライター 伝昌夫)