最終プロテストに4度目の挑戦! 通算2オーバー・22位タイで第4ラウンドを迎えた神農洋平は、喉から心臓が飛び出そうな気持ちを抑えてスタートティーに上がった。
18ホールをラウンドし、スコアを提出した神農は成績ボード近くの椅子に座っていた。3日間68・74・73のスコアだったが、第4ラウンドではボギーが先行し、その後連続ボギーを打ち、前半でスコアを3つ落とす。後半に入っても本来のゴルフが出来ず、12番ホールから3連続ボギーを叩いてしまう。15番パー5ホールでようやくバーディーを奪ったものの、17番ホールでは、7つめのボギーが待ち受けていた。
1バーディー・7ボギー77とスコアを大きく崩し、通算8オーバーで順位を大きく下げてしまった。合格圏内に踏みと止まれたかどうかが、スコアカード提出時点では不明だったのだ。
「合格なのか不合格なのか。手に汗握り、その汗でお風呂を沸かせそうですよ」と苦笑いを浮かべた。神農の合否を確認したい知人や友人から問い合わせ電話が次から次へと掛かって来る。「まだわからない状況なんです。(スコアを落とし)ご心配をお掛けして申し訳ありません。もう少し待って頂けますか」の返事を繰り返していた。
大阪桐蔭高校を経て、中央大学卒業後の2013年9月に神農はプロ転向した。ツアー出場を夢見てクォリファイングトーナメント(QT)を受け続けたが、好成績を収められない。16年のサードQT落ちでツアープロの道を断念し、サラリーマンとなった。だが、消化不良のような気持ちに襲われ始める。「ゴルフで戦っていた時の人生の方が、苦しかったこともあったけれどホント楽しかった」。脱サラし、再びツアープロの道を歩み出したのだった。「両親からは、さすがに猛反対されました。でも、自分の気持ちに嘘はつけない。もう一度チャレンジしたいと思ったのです」。
脱サラのプロゴルファー。PGAプロライセンス取得を目指して、4度目の挑戦となった今回の最終プロテスト。「見えないプレッシャーに何度も押し潰されそうになりました。でも、自分で望んで選んだ道ですし、自分との戦いがゴルフです。目の前の一打にベストを尽くすしかない。そう思い続けながらプレーしました。ゴルフを再開してから使い始めたパターが、苦しいパーパット、ボギーパットをねじ込んでくれたんです。応援して頂いている方々のためにも、合格したい」。
神農が祈るようにそう話した時、「通算8オーバーの選手が合格となりました」とアナウンスされた。「やったー!!」。神農は汗をかいた右手を強く握りしめ、その拳を力強く突き上げてガッツポーズ。そして、誰にでもなく、深く頭を下げてお辞儀をした。ゴルフができる幸福。その感謝の気持ちが、神農を成長させたのかも知れない。携帯電話を取り出し、ゴルフ再開に猛反対した両親に電話を掛けた。「おめでとう。良かったねと言ってもらえました」。神農の目には、うっすらと涙が滲んでいた。
(PGAオフィシャルライター 伝昌夫)