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〔News/FR〕トップ合格を自信に変えて、村上はツアーで活躍できる選手を目指す

2021年09月03日
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 「2021年度PGA資格認定プロテスト 最終プロテスト

」最終ラウンドが9月3日に行われた。チャンピオンコースとも言われる登別カントリー倶楽部で行われた厳しい72ホールの戦いを終え、会場は受験生の喜びと悔しさが入り混じる一日となった。最終プロテスト合格者は

8オーバー292ストローク47位までの51名

。首位スタートの村上拓海(21歳・フリー)が70ストロークで回り、通算11アンダーとし、2位に4打差をつけて最終プロテストトップ通過を果たした。村上は来シーズンの日本プロ出場権とJGTO・QTサードステージからの出場権を獲得。地元北海道勢では長谷川大晃(24歳・旭川GC)が37位で合格した。

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 第1ラウンドでベストスコア66をマークして首位に立った村上拓海が、そのまま逃げ切ってトップ合格を果たした。第3ラウンドは通算10アンダー。2位の遠藤健太とは3打差の単独首位からスタートし、2番、3番ホールで連続バーディーを奪う。幸先の良いスタートは切れた。しかし、村上の心の中には全く余裕はなかった。

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 同組で回る遠藤とは前日も一緒の組だった。遠藤はPGAチャイナツアーに本格参戦し、シード権を獲得した実績ある選手だけに、そのプレーぶりに圧倒される場面も少なくなかった。しぶとい、粘る、スコアを落とさない。遠藤との3打差を守りとおすのは決してやさしくない。「遠藤さんのプレーを知っていたのが良かったのかも知れません。そのうえ、コースは一旦スコアを落とすと歯止めが利かなくなるタフさでしたから、まずはボギーだけは打たないように集中してプレーしました」。追いつけそうだという思いを遠藤に抱かせない。

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 村上が連続バーディーを決めた2、3番ホールで、遠藤も連続バーディーを決めた。(さすがにしぶといな)。村上の想定内のプレーだったことで焦りは感じなかった。逆に4番パー4ホールで遠藤がボギーを打ち、6番パー74ホールで村上がバーディーを奪ってその差を5打差に広げられた。「何打差あっても気は抜けない」。必死に自分にそう言い聞かせながらプレーし、前半は3バーディーの32で村上は回った。

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 バックナインに入ると無理な攻めを控え、パーセーブに徹した。肉体的にも精神的にも疲労感を覚え始める。キャディーバッグのポケットの中には、コンビニで買っておいたおにぎりが二つ。いつもはプレー中にランチ代わりにたいらげるのに、今日は一つしか食べられなかった。大好きな「筋子」と「こんぶ」でも、筋子しか口に入らなかった。首位の座を守り続けるのは、辛かった。

 最終プロテスト2週間前のことだった。主催者推薦選手として村上は北海道・千歳で開かれたJGTOツアー「セガサミーカップ」に出場した。推薦したもらったお礼代わりのためにも予選は通過したい思いがあった。第2ラウンドの5ホール目でバーディーを奪い、通算5アンダーにスコアを伸ばし、決勝ラウンドの扉に手を掛ける。しかし、残り13ホールで4ボギーを叩き、予選通過に2打及ばなかった。「安心したり、油断したりすることの怖さと集中力の大切さを改めて感じました。予選落ちを喫した自分に大会スタッフの方々が『プロテストは合格して』って励ましてくれたんです」と村上。

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 屈辱的な予選落ちが、良薬となった。「何打差あっても油断しない」。気持ちは切れなかったが、疲労感までは抑えられなかった。16番パー4ホールでティーショットを右に曲げ、ボールは右ラフの傾斜面に止まった。「体が疲れと緊張で思うように動かなくなっていました」。それでもパーをセーブ。最終18番パー4ホールを迎え、遠藤とは5打差。これまでのゴルフ経験則からティーに上がる前に村上はホール攻略法を決めた。ティーショットがラフに捕まったらレイアップし、寄せワンのパーを狙う。ラフからの無理なパーオン狙いは、ボギーに抑えることも難しくなる。

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 村上のティーショットは左斜面のラフに捕まった。予定どおりフェアウエイに打ち出し、3オン。しかし、1パットどころから2パットに収められず、3パットのダブルボギーでフィニッシュした。3バーディー・1ダブルボギーの70。通算11アンダーで最終プロテスト4日間、単独首位の座を一度も渡さず、トップ合格を果たしたのだった。

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「サードQT出場資格はもちろんですが、来年の日本プロゴルフ選手権というメジャー大会の出場権を得られたのは本当に嬉しいです。自信にもなります」と72ホールの緊張感からようやく解放され、手にした二つの出場資格。この喜びをすぐに伝えたい。これまで応援してくれた様々な人々の顔が思い浮かぶと目頭が急に熱くなった。「このトップ合格を自信に変えて、でも決して満足はせず、ツアーで戦って活躍できる選手になるようにさらに練習をして行きます。2週間前の北海道での雪辱を果たせて良かったです」と、村上は赤い目を細めた。

 キャディーバッグのポケットに入れたおにぎりがまだ一つ残っている。具はトップ合格を「よろこぶ(昆布)」ためだったとは、最後まで気づけなかった。

(PGAオフィシャルライター 伝昌夫)

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