最終プロテスト第1ラウンドのスタートタイムは、アウト・インコースともに午前7時30分。岩渕隆作はアウト1番組でティーオフした。「一番組って『露払い』とも言われますよね。その言葉どおり、洋芝のコースですから朝露が厄介だなぁと思っていました。ラフに限らず、フェアウエイからのショットでも朝露によるフライヤーが気掛かりでした」。
4番パー4ホール。ドライバーショットでフェアウエイキャッチしての2打目。左からのアゲンストの風を感じた。グリーンを狙ったものの、風の影響を受けてグリーン右手前のバンカーに捕まる。ボール位置からピンまでは下り傾斜だったため、繊細な距離感が必要だった。結果はショートし、カラーからの4打目のアプローチショットはカップを2メートルもオーバーした。ダブルボギーのピンチ。岩渕はボギーパットを何とかねじ込んだ。「ダブルボギーだけは免れてホッとしました」。安堵感から気持ちに余裕が生まれた。6番パー4ホールで10メートル、7番パー4ホールでは3メートルのバーディーパットを決めて、スコアを1アンダーとした。気が緩んだわけではなかったが、9番パー4ホールで3パットのボギーを叩き、前半は2バーディー・2ボギーで回り切った。
後半に入って10番パー4ホールでは2打目をピン50センチに着け、14番パー4ホールでは2打目をピン2メートルにピタリと止めてバーディーを奪う。虎の子の2バーディーを持ち帰って、2アンダー69でフィニッシュ。2位タイの好発進を遂げたのだった。「作戦大成功です。ドライバーで距離を欲張らず、ライン出しを最優先させ続けました。飛距離は260ヤードほど。距離を落としてもつねにフェアウエイから2打目を打てたのが奏功しました」と岩渕は思わず白い歯を見せたのだった。
愛知県の三好CC練習生としてゴルフの腕を磨いて来た。中学時代、ゴルフ練習場で知り合った正岡竜二から指導を受け続けている。プロテスト受験は今回で3回目。過去2回は2次予選落ちを喫している。敗因は不安定なドライバーショットにあった。「泥臭いゴルフに徹しろ。上がってナンボ。ドライバーショットが苦手なら振り回さずにライン出しを最優先させろ」。プロテスト受験前に師匠・正岡からの御宣託を忠実に実践しての好結果。「僕は奇麗なゴルフをしたがる傾向にある。それを正岡さんは見抜いていてのアドバイスだと思います」と岩渕。残り54ホール。振らず作戦で合格を目指す。