(右・笠原、左・長谷川)
一年前の最終プロテストでも、オレンジ色のユニフォームが目立っていた中部学院大学ゴルフ部の4年生チーム。今年は長谷川貴優と笠原瑛の2名が最終プロテストに駒を進めていた。 長谷川は「セントレア空港から笠原と移動してきて『一緒に合格しよう』って話していたことが実現できて、ほんとうに嬉しいです」と合格ラインに入ることができて肩をなでおろしたが、長谷川にとって最終プロテスト5日間は、あぶない綱渡りの連続だった。
第1ラウンドは71、第2ラウンドは72としてこの時点で通算1オーバーは62位タイ。合格圏内に入るためには、第3ラウンドでスコアを伸ばすことが絶対条件だった。「初日からスコアメイクができないのは、パターが打てない、ラインが読めていないことが原因でした」と振り返る。
第3ラウンドの30日はスタートせずにサスペンデッド。31日はスタートのアウト1番をホールアウトした後にサスペンデッド。9月1日の最終ラウンドは2番ホールからプレーを再開したものの、いきなり3パットボギー。3番パー3ではパッティングがショートして、バーディー逃しのパー。「ちょっと焦りました。でも大学のゼミで学んだメンタルの保ち方を思い出したんです。残り15ホールを5ホール毎3パートに分けて、それぞれ1つずつスコアを伸ばそう、ポジティブに捉えよう」と目標を打ち立てた。14番ホールまで3バーディー、1ボギーと順調にプレーを進めていたが、15番パー3では3パットボギーに。「残り3ホールは、イメージの良いホールだから悔いなくやる」と覚悟を決め、17番パー5でバーディーを奪い、最終18番でも堂々とやりきると、目標のトータルイーブンパーでホールアウト。カットライン上ではあったが、見事合格ラインに入ることができた。
「苦しい展開でしたが、反省はラウンドが終わってからしようと。自分に絶対に負けないと気持ち切らさずにやりきりました」と振り返った。「良い仲間たちと乗り越えられた、学生生活の良い締めになりました。一生モノの資格を手に入れることができました。これからはQTファイナルへの出場、そしてツアー活躍を目指します」。最後に粘りのプレーを見せたキャプテン長谷川にとって、この経験は大きな糧になるに違いない。
一方で、第3ラウンドではキャプテン長谷川よりも6組早くホールアウトしていた同級生の笠原瑛。「パッティングの調子が悪いって言っていたから、なんとかうまく切り抜けてほしい」と、長谷川の成り行きに気を揉んでいた。アテストを終えた長谷川に駆け寄ると、スコアボードの成績を確認し「よし、よくやった」と手を掴み、互いの合格を確信。キャプテンという重責を背負いながら、調子を上げられない長谷川のもどかしさを一番わかっていたのが笠原。プレッシャーからようやく解放された瞬間を、二人で喜ぶことができた。
笠原は第1ラウンドで70、第2ラウンドでは67をマークし、悠々合格ができる位置にいたが「集中力をきらさないように」と慎重にスタート。前半9番ホールでボギーが先行。その後12番では3パットボギーに。「ずるずるいかないようにしないと」と丁寧にプレーを進め、ようやく16番でバーディー。最終18番ではティーショットを右に曲げてしまいグリーンを狙えない位置に。「キャディさんに『無理せずに安全に』と言っていただけたので、最小限のボギーで終えられたんです」と振り返るが「上がりがボギーは後味が悪いですね」と反省もあるようだが、念願の合格に喜びもひとしおだ。
笠原はレフティーゴルファー。聞いてみると、ゴルフ以外はすべて右利きの生活だという。「幼少期は野球をやっていたのですが、それは姉が習っていたゴルフも面白そうだなって。レッスンを一緒に受け始めた時から左打ちでした。父も『利き腕で引っ張れるからいいんじゃないか』って、あまり気にしていなかったですけどね」と笑う。「当初はクラブも選べなくて、決ったメーカーのブランドしかなかったですが、最近はロングアイアンなんかも国内メーカーが生産しているので、ギアは充実してきています」という。
笠原は野球で鍛えた体幹と体の特性を生かして、左打というスタイルになじんでいる。「右打ちの人の前でスイングすると、鏡見ているみたいでわかりやすいって言われます。これからのレッスンに役たてるかもしれないですよね」。プロになればゴルフの楽しさも広がるに違いない。
中部学院大学ゴルフ部出身の個性豊かな2名が、念願のプロテスト合格を果たすことができた。