プロテスト会場では、ひときわ目立つ蛍光カラーのウエアを着ている受験生が視界にはいってくる。第1ラウンドはオレンジ色、第2ラウンドはグリーンでユニフォームをそろえた大阪学院大学ゴルフ部の学生だ。在学4年生でゴルフ部キャプテンを務める鈴木千貴が6バーディー・1ボギーで5つスコアを伸ばし、134ストローク通算8アンダーで5位グループに入ってきた。
出だし1番、2番で連続バーディーを奪うと、4番パー4では左ラフからグリーンを捉えられずボギー。しのいで迎えた9番パー4(471ヤード)は、ボギー設定でもいい難易度の高いホール。ここで鈴木は残り30ヤードのアプローチをきっちりと寄せてパーを仕留め、良い流れが作れることを確信した。後半11番で5メートル、12番3メートル、13番では4メートルのパッティングを沈めて3連続バーディー。さらに17番でも1つスコアを伸ばして、この日は66をマークすることができた。
「昨日よりもグリーンは柔らかいと感じましたし、ラフのコントロールも大丈夫でした」と安堵した表情を見せた。得意クラブはピッチングウェッジ。特に今回のような洋芝のコースではショートゲームがかなり重要なポイントになることを理解しており、「グリーン周りからはカップを狙う精度の高いゲームを目指しています」と洋芝対策も意識して練習を重ねてきた。
大学に入ってからは半年に一度、東京でゴルフコーチをしているという兼濱開人氏にスイングやゲームの組み立てに関するアドバイスを受けに行くという。「だいぶゴルフの精度は上がってきています。身体、精神面でもこのプロテストを通じて自分の強さが感じられるようになってきました」とこれまでの学生生活4年間の取り組みに、間違いはないことを感じている。
関西オープンでは大槻智春プロと同組でプレーし、プロゴルファーが繰り出すショートゲームの精度の高さに感動した。先輩には今年の日本プロで優勝した平田憲聖や昨年日本学生を制覇した宇喜多飛翔(うきた・つばさ)が同期にいることがプロを目指す理由のひとつでもある。宇喜多は今季のレギュラーツアーで1000万円を超える賞金を獲得していることも刺激になっており、「早くプロ入りして仲間に追いつきたい。まずはプロテスト合格が目標です」と口元を引き締めた。
鈴木の父はハンディキャップ3という腕前で、幼少期から父のゴルフになじみがあり、そんな父と一緒にゴルフを楽しんできた。一方で鈴木はプロゴルファーという職業を目指すだろうなと感じていた。ゴルフの傍ら、リトルリーグで野球の魅力を味わい、選手最後の年には全国大会優勝も経験することができた。
しかもリトルリーグの試合会場は北海道だったこともあり、今回の最終プロテストでも「北海道は何かの縁がある」と自分の不安を自信に変えている。残り2日間は大阪学院大学ゴルフ部キャプテンとしての集大成を示す機会でもある。「しっかりと戦い抜きます」と自らに言い聞かせた。