記者たちからのインタビュー取材を受けるたびに必ず尋ねられる。「日本タイトル3冠最年少記録」。この日本プロゴルフ選手権大会が始まるまでは、尾崎将司の27歳248日が最年少記録。小平智が大会を制したなら、27歳245日で記録更新になるからだ。
第3ラウンド終了時点で通算8アンダー首位の谷口徹とは3打差の通算5アンダー3位。最終ラウンドの18ホールで十分巻き返せる打数だ。
「前半で3つスコアを伸ばし、優勝ラインと思われる12アンダーにしたい」。その思いを小平は胸に秘め込んだ。
最終組の一組前で回る小平は、目の前に優勝争いの選手がいない。それが気楽さ、追いかける立場としては有利になることを願った。スタート1番ホールで幸先よくバーディーを奪う。この時点で2打差に迫る。連続バーディー奪取で勢いをつけたかったが、パーのスコアが4ホールも続いてしまう。
思わず空を仰ぐ。前日は雷雨でスタートが5時間も遅れた。パームツリーの葉が左右に大きく揺れるほどの風と、殴りつけるような雨が、コースを襲ったのだ。
「(前日の悪天候で)コースにはぬかるんだ所があって、運に恵まれないことが3、4回はありました」とホールアウト後、小平はそう振り返った。
辛抱強く耐えて迎えた6番パー4ホール。谷口からは「ショットの天才」と言われる小平がグリーンを狙う第2打。地面のボールを見て、嘆いた。ボールに泥がこびりついている。ショットの曲がり幅に保険を掛けて打ったものの、それを大きく上回る左引っかけショットが飛び出した。リカバリーもミスし、痛恨のボギーとなった。
それでもリーダーズボードで優勝争いのスコアを確認し、「やるしかない!行くしかない」と攻撃ゴルフをし続けることを小平は誓った。
フロントナインではスコアを一つ伸ばしただけだったが、バックナインにターンしての10、11番ホールで連続バーディーを奪取。首位と3打差に詰め寄ったが、「泥」の不運によってスコアを縮められず、5バーディー・2ボギー69でフィニッシュ。通算8アンダー・3位タイで日本タイトル3冠達成記録を樹立できずに終わったのだった。
「攻めた中で、良いパーを随分取れたことが成長の証だと思います。ジャンボ(尾崎)さんの記録はヤッパリ偉大です。次、また違う記録で一番になるように頑張ります」
不運を恨まず、全力を尽くした自分を褒め、それを自信に変え、次の戦いに備える。
そんな小平の淡々とした受け答えが印象的だった。