1番ホールからスタートした尾崎将司は、9番ホールでバーディーを奪うまでパーを重ね続けた。
出場選手の多くが「構え難い」「ティーショットも2打目も難しい」と苦にする464ヤードの13番パー4ホール。
第1ラウンドの対パーはプラス0・231で難易度ランキング4位。
尾崎は前日ボギーを打っていたが、この日もボギーを叩いてスコアをイーブンパーに戻してしまった。
それでも16、17番ホールで連続バーディーを奪い、2アンダーで最終18番パー5ホールを迎えた。
パー以上でホールアウトしたなら公式戦初のエージシュート記録樹立となる。
尾崎は3打目でグリーンを捕らえ、ピン手前6メートルのバーディーチャンスに着けた。報道カメラマンたちがグリーン奥に群がる。
ボールはカップ手前で止まり、1メートル強のショートパットが残った。
ギャラリーも、報道陣も記録達成を確信した。
だが、パーパットは無情にもカップに蹴られ、記録達成はお預けとなった。
「70歳でエージシュートと言われてもピンと来ないよな。でも最後(のホール)、あんな所に(カップを)切るかっていう位置だった。上り(のライン)だから、普通に行けばいいと思ったけど…」。最終ホールでの3パットを尾崎は、そう解説した。
マウンドに切られたカップは傾斜と芝目によって予想以上に曲がるラインだったのだ。
これまでの不振続きのゴルフを払拭するようなプレーを展開した一日だった。
連続バーディー奪取した16、17番ホールは風が吹く中で、ティーショットも2打目も思い描いた通りのショットを放った。
「そういうゴルフをやっていれば次につながると思う。3日間、しんどかった。練習ラウンドは余計だったかな(笑)」。
第1ラウンド77、第2ラウンド71。4年ぶりのアンダーパースコアに対して自分を褒めながら、こう呟いた。
「大したもんだよ。18番ホールはティーショットもセカンド、サードショットも良い球を打って、でもボギーになるって言うのは、ゴルフって不思議なもんだよな。
(スコアを出せる】雰囲気は出て来たから、あとはもう10ヤード飛ぶようになれば、まだ前向きな気持ちも出て来る」。
尾崎はクラブハウスを後にした。
古希を過ぎてもゴルフに対する向上心は決して失うことはない。
尾崎の背中がそう語っているようだった。