リーダーボード最上段のスコア「-5」を見て、呟いた。「乗っている人とそうでない人との差ですかね。最終18番パー5ホールのティーショットがマンホールに当たり、池ポチャ。それなのにパーセーブ。普通なら『よりによって池に入るか!』って怒ってボギーやダブルボギーを叩いてしまうのに、パーで上がるなんて凄いですよ」。
そう話したのは、松村道央。自身は4バーディー・2ボギー70で回り、9位タイに着けた。「首位の中島(徹)は、僕とは1歳年下で、ジュニア時代から良く知っているんです。メジャーのコースセッティングで5アンダーは凄い。すべてが上手く噛み合ったんでしょうね。僕ですか? ボギーが先行したものの、次のホールで8メートルが入ってくれたのが良かった。ティーショットがラフに捕まるとピンに寄って行くショットは打てず、フェアウエイからだとピンデッドに攻められる。フェアウエイキープ率が50%を超える程度だったので、バーディーは4つです。うち3つはカップ4メートル圏内でした。
練習場からショットの感触が良く、そのままコースでも再現できた結果です」と松村はニタリと笑った。
松村の体は以前よりも一回り大きくなった。体重は自己最高の79キロ。今年2月のオフから意図的にウエートアップを図っている。
「ボクシングは体重別ですよね。ほんの少しの体重差で階級が違い、そのパンチ力もまったく異なる。ゴルフには階級別がありませんから、体重を増やした方がパワー面では圧倒的に有利。そんな話を知人から聞かされたのがきっかけです。以前、体を絞って体脂肪9%まで落としたこともありましたが、それがゴルフの成績につながったかというと決してそうではありませんでした。ツアーが始まれば、最終日には大会開催前よりも体重が2キロは落ちてしまう。それを考慮してもウエートアップした方が、パワーや持久力アップに直結するはずだと考えました」。
心技体が整ってこそ、成績を残せるという松村だが、ツアー開幕戦時点では「体」だけが出来上がっていた。「心技」は「構えて不安が先立ち、ショットイメージが出ない。(ショットが)寄りそうだとか(パットが)入りそうだとか思えなかったのです。試合数を重ね、今季メジャー第1戦目を前に、ようやく心技体が整えられた感じです」と松村。
ホールアウト後、ゴルフ記者たちに囲まれての取材を受けなかったが、「その方がいいんです。目立たず、したたかに…ですから」。
体つきだけでなく、ゴルフも一回り大きくなったことを松村は最終日のインタビューでアピールするつもりだ。