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日本プロ

<7/6 2R> 連日首位の石川が目指す優勝、そして復活へ

2019年07月06日
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 石川遼が通算10アンダーで迎えた17番パー3ホール。ティーショットはグリーン左手前の池に波紋を描いた。

「ピンまで205ヤード。右からの風が吹いていて、それがフォローなのかどうかジャッジに悩み、フォローと思って7番アイアンを持った」。だが、スイングのタイミングが早まり、ボールにはフック回転が掛かり過ぎての結果だった。

 競技委員の裁定によって3打目はピンまで140ヤード距離となり、ピッチングウェッジで放ったショットはピン3メートル地点にオン。そのボギーパットをねじ込んだ最終18番パー5ホールへ。

 ドライバーショットはフェアウエイ左サイドのラフに捕まった。ピンまでは上りを含めて225ヤード。ボールは、それほど深くはラフに沈んではいなかった。前ホールのティーショットをリベンジするかのように7番アイアンを石川は再び選択したのだった。

「フライヤーするだろうと思ったからです」。ボールは予想通りフライヤーしたが、思った地点よりも飛んでしまったことでピンをオーバー。それでもグリーン上には止まってくれた。イーグル奪取はならなかったが、バーディーでフィニッシュ。6バーディー・4ボギーの67、通算10アンダーで首位タイに返り咲いた。

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 今季の石川は波乱万丈の日々を過ごして来た。開幕戦シンガポールオープンでは第2ラウンド終了時点で2位タイの好位置にいたが、決勝ラウンドにはいってスコアを伸ばせず、結局は47位タイで終えた。その後、腰痛に見舞われて国内開幕戦の東建ホームメイトカップを欠場。同2戦目の中日クラウンズでは、第1ラウンドで再発した腰痛によって81を叩き、第2ラウンドをスタート前に棄権。その後3試合をスキップし、復帰戦となった日本ゴルフツアー選手権(宍戸ヒルズカントリークラブ)で4日間プレーし、21位タイの成績を残している。

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「(ツアープロ転向後)これまで成績を最も成績を出せなかった、上手く行かなかったコース(での試合)に復帰して、(20位タイの)順位を残せた1週間のゴルフが切っ掛けでした」と好調ゴルフの要因を話した。第1ラウンドでは2番アイアンを多用し続け、苦手にしていたドライバーを封印した。2オーバー・62位タイ。しかし、ドライバーで打ちたい思いが強まる。「(コースに)打たされているよりも、自分で打ちたいと思って打つことの大切さに気づかされた」のだ。

 それまで不振の2文字を拭い去るためにどれほどの練習時間を費やして来たのだろうか。不安を打ち消すためにはコースでの一打に勝るものはない。それもフェアウエイを捕らえたなら不安が自信へと変わり、その積み重ねが本来の攻撃ゴルフに、武器になって行く。第2ラウンドでは、キャディーバッグからためらいなくドライバーを取り出したのだった。苦手コースと対峙し、ドライバーで打った、攻めた。その結果が、自分で納得できる順位となったのだ。スコアではなく、そのゴルフ内容に満足感を覚えたのだ。次試合のダンロップ・スリクソン福島オープンでもドライバーショットの自信をさらに積み上げられた。そして迎えたのが、日本最古のプロゴルフトーナメント・日本プロゴルフ選手権だった。

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 腰痛防止のために筋力アップトレーニングも並行して行って来た積み重ねもあり、肉体的にもスイング的にも不安の2文字は抹消されている。

 日本プロゴルフ選手権の第2ラウンド。石川は最終ホールをバーディーで締め括った。ギャラリーから大きな拍手が沸き上がった。だが、石川はカップからボールを取り出すと、バイザーのツバに右手を添えるだけの軽いリアクションしかしなかった。静かなホールアウト。声援に応える派手なガッツポーズ、復活の雄叫びは明日の最終ラウンドに取って置いたように見えた。

(PGAオフィシャルライター 伝昌夫)