初めてトーナメント観戦に訪れたコースは、この日本プロゴルフ選手権の舞台となったいぶすきゴルフクラブだった。
「小学3年生の時でした。当時はカシオワールドが開かれていて、熊本県から車で家族と来ました。まだ(矢野)東さんがアマチュアでしたが、バーディーを奪い、そのボールをギャラリーに向かって投げた。それが欲しくて駆け出し、手に出来たことを覚えています」。ゴルフ初観戦の思い出から20年の月日が流れ、今週はギャラリーロープの外側ではなく内側で、選手としてプレーしている。
そんな思い出を持つ重永亜斗夢、30歳。通算1アンダー・55位タイから通算8アンダーにスコアを伸ばし、5位タイに急上昇。優勝争いに一気に加わった。
インコース10番パー4ホールからスタートし、バーディー発進し、2連続バーディー2回を含む5バーディーで前半を終了。後半アウトコースへ入ってからも2、6番ホールでバーディーを奪い、通算8アンダーまでスコアを伸ばす。しかし、7番パー4ホールの2打目をバンカーに打ち込み、脱出に2打を要してしまった。5メートルのボギーパットをねじ込んで最小限のダメージに留めたのだった。
「ショットの調子が良く、フェアウエイを外さなかったのが良かった。昨日に比べてグリーンの状態も良く、スムーズにボールが転がってくれました」
8番パー5ホールでも着実にバーディーを奪い、8バーディー・1ボギー64で回った。8つのバーディーのうち、最長距離3メートル。ほとんどが2メートル以内とアイアンショットの切れも光った。
ドライバーヘッド選びに苦労したものの、前試合でようやく「顔が良く、ショットイメージが出る」モデルと実際のショットが合致し、手応えを持ってこの大会に臨めたという経緯もある。今季は6戦してすべて予選通過をしていながら、最高順位は中日クラウンズでの11位タイ。ベストテン入りは果たしていない。「予選落ちなしは良い部分、ベストテンに入っていないのが悪い部分。もともと体力がないから予選ラウンドは良くても、決勝ラウンドになると思うように体が動かなくなる。そこに苦労しています」と重永。
明日の決勝ラウンド36ホール。長丁場に耐え切って、今度はバーディー奪取ボールではなく、ウイニングボールを重永がギャラリースタンドへ投げ込むしかない!