昨年大会では50歳の谷口徹がベテランの底力を見せつけ、プレーオフの末に藤本佳則を下して大会最年長優勝を飾っている。
6月16日に50回目の誕生日を迎えた藤田寛之が7バーディー・1ボギー65で回り、大会初日を首位タイで終えた。
インコースからスタートし、12番ホールから1メートル強の距離のバーディーパットを3ホール連続でねじ込み、18番パー5ホールでもバーディーを奪った。この時点で4アンダー。後半も着実にスコアを伸ばす。7番パー4ホールで6つ目のバーディーパットを決め、スコア掲示板で首位に並んだことを確認した。
この日はパー5に設定された8番ホールを迎えた。「できればバーディーチャンスに着けたい」と思って藤田はティーショットに臨んだ。ボールはフェアウエイを捕らえた。2打目はピンまで245ヤードながら打ち上げを考慮すると無理にツーオンを狙うこともない。スリーオンで確実にグリーンキャッチする方が得策だ。藤田はレイアップし、サンドウェッジでの3打目は予想以上にバックスピンが効いてしまい、ピンからボールが遠ざかってしまった。カップ手前8メートルのバーディーパットになるとは想定外の結果だった。だが、その距離のあるパットを一発でねじ込み、7アンダーにスコアを伸ばす。単独首位。
藤田にとっての最終9番パー4ホール。フェースが少し開いてのインパクト。ボールは右方向に打ち出された。フェアウエイ右サイドのバンカーにボールは消えて行った。
「ピンまで170ヤード。前方のバンカーのアゴが高く、それをクリアーできるクラブは9番アイアン。花道まで運んで寄せワンを狙いましたが、寄せ切れず入れ切れずのボギー。それまでは非常に良いゴルフだったんですけどね」。
悪天候続きだったことで、練習日にアウトコース9ホールを回ったにとどまったものの、15年前のカシオワールド以来の18ホールズプレーを「65」でフィニッシュした。「年齢をカバーするためにトレーニングをしたり、ホテルではストレッチやヨガをしたりの努力はしています。レギュラーツアーで通用するポテンシャルを維持するようにしていますが、昔のようには気持ちが続かない。ですから自然体で試合に臨んでいます」と藤田は加齢による肉体と精神の葛藤を吐露した。
視力の低下でボールの行方が見えづらくなったため、黄色のカラーボールを採用した。ヨガは2年前から始めた。それでも対応できないことが少なからずある。「この歳になると日々の体調が良い時もあれば悪い時もある。それを受け入れるようにして、その時の調子に応じてプレーしていますが、今日はショットが安定していましたね」。
初日首位タイ発進もまた想定外だったのか。それは違う。「(賞金)シードを一年でも長く続けたい。優勝を諦めてはいません」と藤田は言い切った。昨年大会覇者・谷口に続く「シニアルーキー」優勝への布石は打たれた。
(PGAオフィシャルライター 伝昌夫)