最終日は、朝9時過ぎからコースに雨が降り始めた。風も吹き気温も下がる。冨山聡の最終ラウンドは9位からのスタートだったが「油断は禁物」と、気を引き締めて1番ホールのティーショットを放った。
左サイドのペナルティエリアギリギリのところで球は見つかった。深みにあったラフからセーフティーエリアに出すだけで精一杯だったが、動揺もあり、球はグリーンにも乗らず、パッティングも決められず。ふがいないダブルボギー発進。2番パー5ホールでは、冷静にバーディーを獲りスコアを1つ戻す。続く3番ホールは185ヤードのパー3。雨が強くなり、冷たいアゲインストの風を顔に受ける。選んだクラブは5番のユーティリティーで、187ヤードと読んだ。放ったショットは「完璧」だった。しかし雨風が強く、ボールをグリーンに置けたということしかわからなかった。グリーンに近づいても、あるはずのボールが見えない。おそるおそるカップを覗いてみると、自分のボールが入っていた。人生4回目のエースで、試合では3度目の達成だった。
前半は33で終えたが、後半は思うようにスコアを伸ばせず、この日は70で回り、通算6アンダー12位。冨山は日本プロの出場権をほぼ手中に収めたのだった。
「日光カンツリーでの日本プロ開催が決まってから、絶対に出場するんだという強い思いを抱いてました。良く知っているコースの一つ。とにかくたくさんの技が求められるコースなので、そういう意味ではゴルフを面白く魅せることができますよ」と冨山は笑顔になる。「実は左肘を手術してから、ゴルフの感覚がわからなくなっていたんです。去年のクオリファイングトーナメントまでにと思っていたけど、調子が戻ってこなかった。がむしゃらに練習場でボールを打っていたこともありました。だけどゴルフ感を取り戻すにはと、コースでじっくりとプレーすることがいいかもしれないと、練習パターンを変えたんです」。手術から2年半ちかくかかったが、最近になって自分の持っていた感覚がじわりとよみがえってきた。
「もう若い世代ではないし、ちゃんと自分の体に向き合った練習をしないと」と、今年42歳という年齢ならではの気付きもあった。エースを達成し、ぐっと出場権を引き寄せた冨山の復活に期待がかかる。