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開催週月曜日に行われた最終予選会から、決勝ラウンドへ駒を進めた山本豪には、忘れられない一日となった。首位と1打差、通算7アンダー・3位タイで迎えた第3ラウンドは片山晋呉、石川遼と同組。スタートティーを取り囲む大勢のギャラリーに戸惑いを覚えた。
(なぜか、今週は思いもしないことばかりが続いている)。山本は、心の中できっとそう呟いたに違いない。なぜなら、まずは、マンデートーナメントと言われる出場選考会はエースドライバーで挑めなかったからだ。5月下旬のAbemaTVツアー「太平洋クラブチャレンジ」練習日に割れてしまい、それ以降はサブドライバーで戦い続けていた。「無名選手なのでクラブ契約を結んでもらっていませんから」。母親に同じヘッドをネットのフリーマーケットで探して買っておいて欲しいと頼んでいたという。「それが5万5000円で売り出されていたそうで、最終予選会を通過できたので、早速送ってもらったんです」。
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一難去ってまた一難。「実は昨日のラウンドで3番ウッドが壊れてしまって、プレー後すぐに中古ショップへ駆け込みました」。運よく同ヘッドは見つかったものの、愛用ヘッドよりもロフトが1度多い15度。試打して別段違和感はなかったものの、愛用グリップに差し替えてもらって3万2000円を支払ったそうだ。「大きな痛手ですよ。大出費です。クラブトラブルが続いたので、お払いに行かないといけませんね」と山本は笑いながらそう話したのだった。
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スタートティーでの選手紹介アナウンスで、ギャラリーから拍手が沸いた。山本は平常心を保てず、落ち着かない。アドレナリンが湧き出た。それがマイナスに働き、8番ホールで4つ目のボギーを打ってしまう。タメ息を吐いたことで、気持ちがすっきりした。失うものなど何もないんだ。開き直った。落ち着きも取り戻した。迎えた9番パー5ホール。会心のドライバーショット。ピンまで198ヤードの2打目。5番アイアンでカット目に放った一打は、ベタピンに着き、OKイーグルを奪取した。11番パー4ホールでバーディーを奪い、13番パー5ホールのドライバーショットも気持ち良く振り抜いた。2打目はピンまで270ヤード。意を決して昨日買ったばかりの3番ウッドを手にする。
「ギャンブルだけど勝負しよう!」。一か八かの一打はピン奥9メートルに乗り、それを山本はねじ込んでこの日2つ目のイーグル奪取をしたのだった。「ぶっつけ本番の一打でした。それまで練習場でもラウンド中も一度も打っていませんでしたからね」。
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最終ホールで3パットのボギーを打ち、結局2イーグル・1バーディー・5ボギーの71、通算7アンダーでフィニッシュ。順位は7位タイに後退した。「最後のボギーは痛かったですね。でも、仕方ありません。3番ウッド探しで、パット練習ができませんでしたから」と山本は笑い飛ばした。はてさて、明日の最終日は、どんな予想外のことが待ち受けているのか。首位とは5打差。まずはイーグル奪取3回でもやっちゃいますか? クラブ出費8万7000円は何が何でも取り返さないと--。