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日本プロ

【7/1 / 1R】ツアー2勝目へ向け、道具もショット力も整った木下裕太が首位発進

2021年07月01日
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 今年のプロゴルファー日本一を決定する「第88回日本プロゴルフ選手権大会」第1ラウンド。6アンダーで首位に立ったのは木下裕太。首位1打差の2位には芦沢宗臣、岩田寛、古庄紀彦、キムソンヒョン、片山晋呉の5名が続く。前回覇者の石川遼は4アンダー7位につけている。

 ゴルフはメンタルスポーツと言われる。動揺したり、不安を抱えたりしていたなら、それがショットやパットに表れ、思うような結果は得られなくなってしまう。心の水面に波風を立てず、18ホールを穏やかにプレーしたい。インコース10番ホール、午前スタート1組目(13組)の木下裕太が6アンダー、ボギーフリーの65でフィニッシュし、単独首位で初日を終えた。

 15、16番ホールで連続バーディー奪取して折り返し、後半のアウトコースでは3連続バーディーを含む4バーディーとさらにスコアを伸ばした「100点出来過ぎ」(木下)ゴルフ。「朝イチでボギーを先行させずに済んだ」12番パー3ホールでのパーセーブがこの日の好スコアに結びついたと振り返った。

「ティーショットをミスし、2打目を寄せ切れず、3メートルのパーパットが残りましたが、それをうまく入れられたことでバーディーを量産できたと思います」。6バーディーの中で、最も長かった距離は5メートル。続いて4メートルが二つ。残り3バーディーは距離2メートル以内だったほど、ショットの切れが冴えた。

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 2018年のマイナビABCチャンピオンシップでツアー初優勝を飾り、2年シードを得た木下は、さらなる高みを目指して様々なドライバー、アイアンを使い始めた。持ち球に至ってはフェードボールからドローボールに変え始めた。風の中でも距離ロスを抑えられると考えたからだ。だが、試合ごとにクラブを換えてばかりいたことから、イメージどおりのショットを打てない原因がスイングにあるのか、クラブのせいなのかが分からなくなり、スコアを出せない。ショットに対する不安が募る。自分のゴルフにさえ不信感を覚え始め、成績を出せない日々が続いていた。攻める気持ちさえ萎えていた。

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 優勝による2年シード権が今年で終わる。そのお陰で気持ちを切り替えられた。思い切りやるしかない。かつての持ち球フェードボールに戻し、ドライバーヘッドは昨年使っていたモデルを流用し、シャフトをリシャフト。しなりを生かしてボールが捕まりやすい、中調子のベンタス レッド(硬度X)がハマった。「フェードはもちろん、ドローを打ちたい時はシャフトのしなり利かせるように振るだけのシンプルさです。アイアン(選び)もようやく落ち着きました」。木下が、それを実感したのが前試合ダンロップ・スリクソン福島オープン第3ラウンドだったという。7バーディー・1ボギー66、最終日も66をマークした(結果14位タイ)。久しぶりの好スコア、好感触で初Vを遂げた頃の自信を取り戻せた。「これで楽しみができたと思ったら、(日本プロ)初日に6バーディー、おまけにノーボギーです。ドライバーでのティーショットはフェアウエイを捕らえたし、アイアンショットはピンに絡み、パットはチャンスで入ってくれました」と頬を緩ませた。

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 開催舞台は、持ち球フェードボールの選手にアドバンテージがあるされるコースデザイン。「基本的にはフェードボールで攻めてフェアウエイをキープできました。練習ラウンドで好スコアが出そうな予感はありました」。愛用ドライバー、アイアンが落ち着いたことで木下は「かつての攻める気持ち」を取り戻したのかも知れない。パターの話が出てこないことで、尋ねた。「結局、初優勝した時の2ボールパターに戻しました」。

 この日マークしたスコアは自己ベスト66を1打更新した。2勝目を飾るための道具もショット力も、心もどうやら整った様子。この好発進を生かすだけだ。

(PGAオフィシャルライター 伝昌夫)