堀川未来夢(Wave Energy)が通算15アンダーで逃げ切り優勝を果たし、プロ日本一に輝いた。一時1打差に迫られたが後半のチップインバーディーなどで突き放し、昨年のカシオワールドオープン以来ツアー通算3勝目、2019年日本ゴルフツアー選手権に続く日本タイトル2冠目となった。3打差2位に片岡尚之(フリー)、4打差3位に吉田泰基(東広野GC)が入った。
楽には勝たせてくれない。堀川はヒヤリとした思いをたぶん、2回は味わっただろうか。
3打差でスタートしたが、追う嘉数光倫が1、2番連続バーディーで1打差に迫った。3番では、3番ウッドで刻んだショットが右の林に消えた。ピンクのウエアを着た後輩の日大ゴルフ部の現役生が応援に来ており、林の入口でボールをみつけた。距離計で計って、いざ打とうと木の葉などをどけたときに「これ違う」と声を上げた。それからまた捜索。すぐに土手の下で見つかった。9番アイアンで出し、残り105ヤードの第3打を1.5メートルにつけて奇跡的なパーを拾った。嘉数がバーディーパットを外し、このホールでの逆転を許さず、ひと息つくことができた。
5、7番でバーディーを取って抜け出したが、終盤に落とし穴が待っていた。16アンダーで独走態勢に入る。2位に5打差をつけていた14番パー3。「6番か7番か迷って、7番アイアンで打ったら、思いのほか飛んでしまった」と奥のラフへ。ここでも寄せ方を迷ってピン方向にアプローチしたが、転がって下の段のラフまで行ってしまった。再度のアプローチは1メートル強に寄せたが、外してダブルボギー。一気に3打差に縮まった。
ここからが本領を発揮した場面だった。16番で奥のラフにこぼしたが「10ヤードぐらいでした」というアプローチが直接入るチップインバーディーに。何度も右こぶしを握り締めた。勝利を手繰り寄せた1打になった。
勝因を聞かれた。このコースは三島キャンパスにある日大ゴルフ部時代からキャディーをし、合宿もしている。「自分の中では熟知していたコース。ティーショットが難しいので、ドライバーで大丈夫かな、と思って打つのは危険。少しでも危険な匂いがしたらレイアップした。けっこう刻みました」と、この日はドライバーを握ったのは6回。8ホールでティーショットを刻んだ。コースマネジメントと感性を合わせた勝利だった。
「初優勝(日本ゴルフツアー選手権)に比べると、緊張感はそうでもなかった。最低3アンダーの目標を達成できず(70)、そこは悔しい」と、話した。
この日はボールを捜索してくれたように、日大の後輩たちが18ホール、歩いて応援してくれた。大会前に日大ゴルフ部の和田監督と食事をした際に「(日大が)勝ち切れない。方法を教えてくれ」と言われたという。「勝ち切る方法はなかなかないのですが、後輩がずっとついてくれたし、いいところを見せられたかなと思います。ダボを打ってもチップインしたし、あきらめないでやること」と、コーチとして名前を置いているだけに、実技で範を示した形だ。
自身の日大時代には「高校時代からツアーに5試合出て全部ビリの方だった。プロのトーナメントは無理だなとあきらめて普通に就職しようと思った」と大学3年時には就職活動もした。1年間だけプロを目指そうとして、そのまま今に続いている。
今季はパッティングのイップス症状に悩み、この大会前までは最高はASO飯塚チャレンジドゴルフトーナメントの22位、賞金ランキングは44位に沈んでいた。この優勝でランクは7位まで上昇した。
延べ88個の名前が刻まれた日本プロの優勝トロフィー。89人目に名前を刻む。トロフィーとの写真撮影の時にまじまじとながめ「歴代優勝者の中に名前を刻めるのはうれしい。全員入っているんですよね」と、目を輝かせたのが印象的だった。
(オフィシャルライター・赤坂厚)