本人が言う通り、確かに「複雑な心境」の優勝になった。
青木功の66歳2カ月(2008年鬼ノ城)を抜く、67歳2カ月でのシニアツアー最年長優勝記録を作った髙橋勝成(67)は「申し訳ない」と第一声。「顔で笑って、心では申し訳ない…どう表現していいか、複雑です」と、話した。
朝から強い風に雨の悪コンディション。髙橋ら最終組は10番まで進んだ。しかし、9番ぐらいから風雨が強まって嵐のような状態になり、グリーン、フェアウエーには水が浮いて来た。午後0時49分に中断。天候の回復が見込めないため、午後2時15分に中止が決定。既にホールアウトした選手もいたが、最終ラウンドはキャンセルとなり、第1ラウンド18ホールの成績で競技が成立した。
第1ラウンド最終18番で第3打を直接入れるイーグルで首位に立った。もちろん優勝はうれしいが「ルール的には優勝ですが、2日間やっての勝ち負けではないので…ありがたくいただきますが、ほかの選手に申し訳ない気持ち」という。中断となった10番までで、前日より2つスコアを落とし、渡辺司、井戸木鴻樹、清水洋一の3アンダーに逆転を許していたからだった。
「右の股関節がこれだけ寒いとうまく動かなかった」と振り返る。1番でピン手前3メートルにつけるバーディー発進と幸先がよかったが、気温15度弱、風雨の中、治療中の右股関節の動きが悪くなり「ドライバーはよかったけど、前傾が深くなるセカンドショットが当たらなくなった」という。
4番で手前にショートしてボギー、5番ではセカンドで突っ込めず手前20メートルにオンしたものの3パット、7番では「右股関節を押し込めなくて」と大きくダフって3つめのボギー。2アンダーに後退した。「トップを守って中止だったらね。申し訳ない」と何度も口にした。
それでも、天の仕業は本人とは関係ない。青木功の記録を抜く最年長優勝の価値は色あせない。しかも本人にとっては2007年アデランスウェルネス以来、10年ぶりのうれしい優勝になった。「優勝を夢みながらやって、1日だけでの優勝ですけど、皆さんにお礼したい」と、優勝スピーチした。
「最年長優勝なんておこがましい気がします。それにふさわしいことをこれからやって行かないと。一緒に回った渡辺選手、井戸木くんと、ドライバーの飛距離はそう変わらなかった。これを機に、67歳じゃないゴルフをしたい。(優勝を重ねていた)10歳ぐらい若い頃のゴルフをして、ちゃんとした優勝をしたいですね」。1日に短縮されたとはいえ、自信になったことは確かな様子だ。
エージシュートを今後もどんどん出せばそうなるのでは?「うーん、いつも出そうという願望はありますよ。みんな応援してくれるし、シニアにはレギュラーにはない温かさがある。そう思ってやることが若さを保つ秘訣なのかな」。最年長優勝記録の更新が、これからの目標になる。
(オフィシャルライター・赤坂厚)