これが大ベテランの技。高橋勝成(67)が打った最終18番パー5での第3打は、ピン手前5,6メートルに落ちて転がり、そのままカップに飛び込んだ。思わずバンザイ。同組の高見和宏とハイタッチ。グリーン周りで拍手を送るギャラリーに帽子を振る。大騒ぎだった。
3打目のピンまでの残り距離は107ヤード。「すごいフォローだったんで、アプローチウエッジで90ヤードぐらいのつもりで打った。サンドウエッジだと高く上がったら風に乗ってどこまで飛んでいくか分からないからね」というクラブ選択だった。
入ったところは見えた。「心臓が止まるかと思った。高見くんに『あと1つ取ればトップに並ぶ』と教えてもらっていたんで、近くに行けば、でもピンをオーバーするなってことしか思っていなかったんで。不整脈があるのに」とおどけた。
大きな1打で、首位に躍り出た。「首位スタートなんて、何年ぶりだろう。たぶん10年ぶりぐらいじゃないかな」と、つっかえ棒を要求するように胸をそらせた。
この日は朝から強風が吹き続けた。スタッフの簡易風速計では約9メートル。「もう笑っちゃうしかないぐらいの風で、高見君と応援し合っていた。一緒のアマの人と、みんなで気持ちよくやろうと」と、強風の悪コンディションに立ち向かったという。
2番で3メートルを入れてバーディーが先行。5番では「向かい風でセカンドは全然グリーンに届かなかった」というボギーも、6番で2メートルにつけて取り返した。10番ではラフから3メートルにつけてバーディー。ここで2アンダーとし、最終ホールまでつなげた。
半年前から行っている右股関節の痛みの治療がうまくいって「痛い時もあるけど、いい時は本当にいい」と、不安が解消されつつある。1950年生まれの67歳は、青木基正と同じ今大会出場プロでは最年長。「年の割に頑張ってるでしょ(笑い)。うまく体が動けば、まだまだできる」という自負もある。
今季9月のアルファクラブカップ最終日に7アンダー65で回って、自身3度目、今年初めてのエージシュートを記録した。「65で回れる力はあるんだなと思った。これを繰り返せば、優勝だって夢じゃないでしょう」と話していた。
「明日は気持ちいいゴルフをしたい。ガツガツしたゴルフもしたいけど、やはり楽しく」と話した。エージシュートを達成出来たら優勝は夢ではない。「当然、思っています、エージシュートは。それで勝ち負けになるのはしようがない」。夢を現実に変える日にしたい。
(オフィシャルライター・赤坂厚)