清水洋一(54)が「今度こそ」のチャンスを迎えた。
4バーディーを重ねて8番パー5に来た。残り215ヤードの第2打はピン奥12メートルながら2オンに成功。「打った瞬間、強いかなと思ったら入っちゃった」というイーグルで、一気に6アンダーにして折り返した。
インに入っても11番でOKにつけた。「今日はショットもパットもよかった」と振り返るように、その後もチャンスが目白押し。惜しくも外すシーンが続いたが、17番で右下4メートルが入って8アンダー。最終18番でこの日初めてパーオンを逃すグリーンオーバーのピンチも切り抜けて、64のビッグスコアをたたき出した。
一人飛び出した。後続のスコアを見ても分かる。2位の4アンダー井戸木以下は大混戦。回る風と速くて傾斜が読みにくいグリーンに、各選手はてこずっていた。その中での64に、仲間の秋葉真一も「64は出ないでしょう。まったく取りこぼしがなく、グリーン上で悪いイメージがまったく出なければ、可能性はあるけど」と、びっくりしていた。
「でも、分かんないですよ、僕のゴルフは。明日はしびれちゃって、ひどいゴルフになるかもしれない」と、清水の声のトーンが1つ高くなる。2位に4打差をつけての最終日首位スタートは初めての経験になる。念願、悲願、待望の「シニアツアー初優勝」が目の前にぶら下がってきても、まだちょっと弱気だ。
これまで何度も優勝争いを経験してきたが、跳ね返されてきた。最近では8月のファンケルクラシックで5人のプレーオフに残ったが、後輩の米山剛に初優勝を見せつけられた。
初優勝するために足りないものは?そう聞かれても「なんなんでしょうね」と首をかしげる。「きょうは、朝からショットが思ったラインに、思ったように打てた。パッティングもハンドファーストにしてタップ式に打つようなイメージでと思ったらうまくいった。そういうことなんでしょうか」という。
最終日、大きなアドバンテージを持って臨む。
「みんなの協力が必要。停滞してくれたら(笑い)。みんなが『そろそろ(清水の初優勝は)いいだろう』と思ってくれたらいいんですけど」と、まだ弱気。もっと強気で行きましょう。「うーん、楽しくはできないかも。でも気持ちよくはやりたい」。少し前向きになってきた。スコアの目標は?「最低60台では回りたい。二けたアンダーに伸ばせば。プレッシャーに負けないようにやります」。だいぶ前向きになってきた。
久保勝美、秋葉ら仲間とクラブハウスを後にした。「よ、チャンピオン」と冷やかされながらも、笑顔がのぞいていた。
(オフィシャルライター・赤坂厚)