やっぱり最後はこの人が出てくる。
首位でスタートした室田淳(62)は序盤、苦しんでいた。1番パー5で第2打をグリーンオーバーした後のアプローチをミスしてパーに終わったのが始まり。2番以降、バーディーチャンスにつけながら、ことごとくパットを外した。5番では上から3メートルのバーディーパットを1メートル強オーバーし3パットのボギー。この時点で、追い上げてきた前の組の崎山に1打リードを許した。
途中経過のボードでそれを確認した。「このままじゃ勝てないと思ったね。行かなきゃと」と、ドライバーを握った。1オンが狙えてイーグル賞もかかった311ヤード。グリーン手前に池がある。ほとんどの選手は池の手前に刻むが、1オンを狙った。見事にピン右奥にワンオン。バーディーを奪ってまた追いついた。
実は室田はここでパッティングのスタイルを変えている。「オレのパターの感覚は左手で引いて、右手で打つだった。イメージが出なくてだめだと思って、右手で引いて左手で打ってみた。そうしたらそこから7バーディー。できちゃうんだな。オレって才能あるよ」と振り返った。
6番で10アンダーにした崎山を追い、7番で追いついた。9番で1・5メートルながら難しいフックラインを決め、再び首位に。そこからバーディー合戦になった崎山に抜かれることはなかった。「前の組が遅かったんで、グリーン上が全部見えていたね。10、12番で崎山が入れるし、あれ、あれって思いながらやっていたよ」といいつつも、自身は12番ではグリーンエッジから8ヤードを直接沈めるなど13番パー5まで5連続バーディー。「崎山が13番で外しただろ。そこでオレがOKにつけて、流れが戻ったと思った」と、攻防を振り返った。
抜け出した後は余裕の逃げ切り。グリーンを外した最終18番もパーで切り抜け、36ホール競技では最少ストロークとなる16アンダーをマークした。ツアー記録でもある優勝回数は19勝に伸ばした。20勝まであと1。目標を聞かれ「青木(功)さんから(目標は)区切るなと言われたんだ。今できることをやれと」と、記録の数字にはこだわりを持たない。
昨年末に痛めた腰。この日優勝を争って崎山の紹介で、体幹トレーニングを受けに毎月福岡に通っている。「まだリハビル中で1年かけて直して来年勝負と思っている」と、今大会前も受けてきて筋肉痛だった。それでも今季2勝目、賞金ランクも3位(2854万円)に浮上。「コースに来た時からいいことあると思っていたんだ。ロッカーの番号が66。ムロだったんでね。当たりだと思ったね」と笑った。どうやら、この数字にはこだわったようだ。
優勝インタビューで、ギャラリーに日本オープン(10月12~15日、岐阜関CC東C)の最終予選会を通過したことを披露した。「飛ばないゴルフでも、ラフに入れないで頑張りますよ。固くて速いグリーンは、きょうの『右で引いて左で打つ』でかなり自信あるよ」。来年勝負どころか、1カ月後に日本最高峰の試合で「一勝負」をもくろんでいる。
(オフィシャルライター・赤坂厚)