前週のファンケルクラシック「3日間大会」でシニア初優勝を遂げた米山剛が、今週の広島シニア「2日間大会」も制し、2週連続優勝を飾った。シニア初優勝からの連続Vは2000年の高橋勝成、08年の渡辺司に続いて3人目の快挙だ。
今週は練習ラウンドが出来なかった。ファンケルクラシックでの18年ぶりのツアー優勝でお祝いの花や祝電、メールやLINEが思っていた以上に届き、米山はそれぞれ一つひとつ、一人ひとりに丁寧に返信した。その数は優に200通を超え、返信した矢先に新たなメールが届く状態が続いたからだ。
レギュラーツアー時代からよくラウンドし、熟知していたコースが大会舞台だったことや、マルハン太平洋シニアから使い始めた手元調子の新シャフトによって「ドライバーショットがアゲンストでも確実に飛距離を出せる強い球を打てるようになった」こと、「ようやくシニア初優勝を飾れた」ことで気分的に落ち着いた。そんな余裕が米山にはあった。
初日に6アンダーで首位タイとなり、最終日最終組で午前10時スタート。前組の選手たちがスタートティーや練習グリーンに向かい、午前9時35分にドライビングレンジでボールを打っていたのは米山ただ一人だった。練習ボール残り3球。サンドウェッジで距離50ヤードを示す看板の左サイドに、2球めはその看板右サイドすれすれに打ち、最後の1球は看板中央手前にキャリーで運んだ。狙い通り、イメージ通りのショットが打てたことで、米山は一瞬頬を緩め、すぐにその表情を消すかのようにタオルで顔の汗を拭い、練習グリーンへと向かって行ったのだった。
前日同様に好調なショットとパットがうまく噛み合った。1番ホールで2メートルのバーディーパットを沈め、それを単独首位独走の「狼煙(のろし)」にして4番ホールまで連続バーディーを積み重ねる。9番ホールでもバーディーを奪取し、前半でスコアを5つ伸ばした。7番ホールのティーで「久保(勝美)さんが9アンダーで追い上げて来ていることを知りましたが、焦りは感じず、自分のゴルフに徹しようと思った」と米山は振り返った。ハーフターン直後の10番ホールで前日13番ホール以来、14ホールぶりのボギーを叩いたものの、11番、12番ホールでの連続バーディー奪取で勢いを止めることはなかった。
前夜、広島県出身の倉本昌弘、岡本綾子と食事を共にし、「勢いのある時に勝たないと駄目」とアドバイスを受け、その言葉が背中を押してくれた。
15番ホールでは10メートル、16番ホールでは7メートルの距離のバーディーパットがカップに沈んだ。「(バックナイン)後半のホールで長いパットが入ってくれたのはラッキーでした。勢いで入れさせてもらったのかな」。
最終日は9バーディー・1ボギー63をマークし、通算14アンダーでフィニッシュ。クラブハウスリーダーだった久保の通算11アンダーを3打上回るスコアで米山は2週連続Vを決めた。前週ほどの歓喜のガッツポーズは取らず、ギャラリーに向かってキャップを取り、頭を下げて最終グリーンからスコアカード提出所へ淡々と足を運ぶ。その背には「余裕」「沈着」「冷静」のオーラをまとっているように見えた。
「これからもチャンスがあれば公式戦でも優勝争いをして、それを楽しむことができたらいいと思っています」。米山は日本タイトル公式戦=日本プロシニア、日本シニアオープンの「4日間大会」での優勝達成にターゲットを絞っている。
(PGAオフィシャルライター・伝昌夫)