スコア提出所へ向かう久保勝美(54)を、練習ラウンド仲間の秋葉真一(52)が出迎えた。「何やってんの!?」。気が置けない間柄ならではの乱暴な褒め言葉だった。「埼玉県勢が皆頑張っているからさぁ…。パットがスコンスコン入ったんだよ」とニコニコ顔で久保は答えた。
通算1アンダー・25位タイの久保は、1番ホールで4メートルのパットを沈めてイーグルを奪取。4番ホールで7メートル、5番ホールで6メートルのバーディーパットが決まった。好調なパットは勢いを増し、7番ホールからの3連続バーディーでフロントナイン29。前半だけでスコアを7つ伸ばす猛チャージを展開し、首位に1打差に迫まった。 久保が優勝争いに加わったことで、ハーフターン後にはスコアラーが急遽帯同した。
「スコアラーが来たので(緊張して)痺れ出しましたよ。ほっといてくれれば良かったのに」と冗談交じりでバックナインのプレーを振り返った。
11番ホールで1メートルのバーディーパットを決めた後、パーセーブが続いたが15番、17番ホールともに2メートルのバーディーパットを沈め、通算11アンダーにスコアを伸ばす。最終18番グリーン右サイドのリーダーズボードで順位を確認し、久保はスライスライン6メートルのバーディーパットに臨んだ。これを沈めたなら通算12アンダー、1ラウンド「60」のスコアになる。
「今までは、入れたいと思ったパットが入らず仕舞いだったので、入れたいと思わずに打つようにしました。僕なんかは欲をかかない方が(結果は)いいんですよ(苦笑)。でも、最後のバーディートライばかりは、欲をかいてしまいましたけどね」
ボールはカップの右縁に反れてのパーセーブ。久保は1イーグル・8バーディー61の通算11アンダーでフィニッシュ。この時点でクラブハウスリーダーとなった。
初日6アンダー首位タイの清水洋一との夕食時、「明日は9アンダーを出して通算10アンダーだ」と話したところ、「届かないよ」と言われたのが猛追の原動力と化した。
「通算10アンダーまで行きたい。あといくつバーディーを取ったらと前向きに考えながらプレーしました」。想定以上のビッグスコアを叩き出し、2位まで上り詰めるチャージは後続選手やギャラリーを驚かせた。
「パターヘッドの装着が緩まり、フェースが左向きになっていました。直してもらったつもりでしたが、それでも左に向いていたので、昔のパットフォームのハンドファーストに構えてアジャストしてみたら、ボールがパットラインから外れず、タッチも合うようになったのです。ケガの功名ですかね」と久保。
プライベートラウンドでは60を出したことはあるが、試合ではこの日の「61」が自己ベストスコアとなった。「これからも今までどおり、ノーボギーラウンドを目標にプレーして行きます」。無欲が奏功して勝利につながる日を待つ。