首位と4打差、通算4アンダーの4位タイから最終日スタートした秋葉真一(52)が猛チャージを掛けた。前半で5バーディーを奪って一気にスコアを伸ばす。ハーフターン後の10番パー5でもバーディー奪取し、通算10アンダーをマーク。その時点で単独首位に立つ。計10ホールを終了してのパット数は14。前半での1パットは6ホール。最終組の一組前で一緒に回っていた奥田靖己が思わず呟いた。「よっ、ミスターパットマン。いい加減にしろよな。ホンマ上手いなパット」。打てば入るパットを目の当たりにして半分呆れて、半分は褒め称えての言葉だった。
「今日はパットが凄く良くて、入ってくれました」と秋葉。快進撃の中にもピンチはあった。9番パー4ホール。ラフからの2打目がフライヤーしてパーオンを逃し、寄せ切れず8メートルのパーパットを残したが、そんなパットも一発で決めたのだ。
「練習ラウンドの時に真板(潔)さんからアドバイスをもらったんです。『パットは悩んだらダメ。ストロークに徹するだけだよ』。その言葉でパットの悩みが解消されたというか、ストロークだけを考えて打つことにしたのです。それが上手くハマったというか、奏功しました」
最終日、18ホール中、ミスパットは一度だけだった。「14番ホールは2メートルのパーパットを左に引っ掛けてしまいましたね」。ボギーとしたが、16番ホールでバーディーを奪い返し、通算10アンダーで最終18番パー4ホールを迎えた。
3番ウッドでのティーショットは右サイドラフに捕まってしまった。ピンまで残り155ヤード。7番アイアンでのショットはフェース上部でのインパクトになり、しかもフライヤーしてボールはグリーン右奥へ。グリーンへと歩を進める秋葉に奥田がミスターパットマンに声を掛けた。「首位タイだぞ」。
3打目のアプローチはピンまで30ヤード。サンドウェッジのフェースを目一杯開き、ロブショットで寄せるショットイメージを持った。「ライは良かったので、ザックリのミスだけはしないように考えました」。フワリと舞い上がったボールはグリーン上に落ち、ピン左横4メートルに止まった。そのパーパットもしっかり沈めて、秋葉は右手拳を握りしめてガッツポーズを取り、ギャラリースタンドから沸いた拍手に応えた。
通算10アンダー首位タイでフィニッシュした秋葉と羽川豊とのプレーオフ1ホール目。オナーの羽川のティーショットはグリーン手前の池方向に飛んだ。秋葉は本戦とは違って、ドライバーを握っていた。
「ショットがどうせ曲がるなら、少しでも距離を稼いだ方がいい。そう思ったからです」と秋葉。開き直りではないだろうが、迷いも不安もないスイングで打ち出されたドライバーショットはフェアウエイをキャッチ。ピンまで残り135ヤードの地点に止まった。ピッチングウェッジで放った2打目はピン左横1.5メートルに着いた。
「本戦と同じパットラインで、しかも距離が短かった」。痺れることもなく、ストロークに徹した。ウイニングパット。前週のシニア後援競技「熊本・阿蘇シニアオープン」に続く2試合連続優勝をもぎ取った。
「プレーオフはプロ人生2度目でした。かつてアジアンツアーで3人でのプレーオフをした経験がありますが、その時は短いパットを外しての負けでしたね。今回はティーショット前に緊張しましたが、その後はプレーに集中できました」と秋葉。短いパットを沈めるか、外すかで結果は大きく変わる。2度目のプレーオフで秋葉は前者となった。
大会前日に「二桁スコア(通算10アンダー)にしたら、優勝チャンスが来そう」と話していたが、そのチャンスを秋葉は完全に自分のモノにしてみせた。