自己ベストタイとなる9アンダー・63をマークし、単独首位に立った溝口英二(52)は、この日のゴルフをこう表現した。「スコア大満足!でも、なぜ出せた?」--。
インコース10番スタートの第1組目の溝口は、出だしホールで3メートルのバーディーパットを決め、14番ホールで7メートル、15番ホールでは3メートルを一発で沈めた。さらに17、18番ホールでも連続バーディーを奪取してハーフターンした。
「前半で好スコアが出て、それを後半どうするのかを考えました。スコアを守るのか、それとも、もっと(攻めて)伸ばすのかってね。自分の戦い、葛藤でした」。
ハムレットの心境でバックナインをプレーし続けた。12ホール目の3番パー5ではツーオンに成功し、17ヤードの距離のパットを2打でカップイン。後半で初のバーディーが来た。そして6、7、8番ホールでの3連続バーディーで9アンダーにまでスコアを伸ばして迎えた最終ホール。5メートルのバーディーパット。
「フックラインでした。このパットだけはさすがに『入れたい』気持ちが強く働いてしまいました。やっぱり欲をかいてはいけませんね(苦笑)。
ショットが完璧だったわけではないんです。アイアンなんて(微妙に)ダフったり、トップしたりしていましたが、近くに寄ったショットを上手く入れられた結果のスコアです。実はスタートホールのグリーンから不安を抱えてしまってのラウンドでした」と溝口。グリーンの速さ、フィーリングによって使用パターを替えているそうだが、この日は前日も使っていたパターを携えた。「練習ラウンドではフィーリングが良かったのですが、試合になってグリーンの速さが予想以上に変わっていて、このパター(選択)で良かったのかなと懐疑的になってしまいました。その分、欲をかかずにパットしたのが奏効した感じです」
昨年大会の最終日は2位の崎山武志に2打差をつけての単独首位スタートだった溝口は、78を叩いて9位タイに終わった。その苦汁をなめてから一年2カ月が経った。愛知県豊明市の自宅からコースまで車で40分。今週は自宅通勤で試合に臨んでいる。
「シニア入りしてからはシード権確保を第一の目標にしています。ツアーに少しでも長く出場し続けたいからですし、それがあってのこと(優勝)だと考えています。今日は良い流れのまま終われたので、明日はまたどんな流れになるか。まずはパター選択が鍵になるんでしょうね」。
自宅通勤だからこそ、余裕を持ってパター選びができる。好スタートを切った溝口の応援に大勢のギャラリーがやって来るはずだ。晴れの舞台は整った。