シニアデビュー戦の山中拓(51)が6バーディー、ボギーなしの6アンダー66で首位に立った。「ラッキーでした」といい「練習ラウンドはすさまじかったんです。80以上はたたいた。びっくりするようなゴルフで、周りの人も『デビュー戦で大丈夫なのか』って思われたでしょう」。この日は自分がびっくりの首位発進になった。
どんなラッキーがあったのだろうか。インを2アンダーで折り返した後、4番で4メートルを沈めてから波に乗った。左に曲がる長いミドルの5番(443ヤード)では左のがけ下に落として溝に入ったが、救済を受けてドロップした場所が「ちょうど一人分立てる場所だった」と、そこから2メートルに乗せてバーディー。「思えば、最短ルートだったのかも。セカンドはピッチングでしたから。普通に行ったらそんな短いので打てませんから」と、このホールは言葉の通り「ラッキー」だった。
7、8番で取って6アンダーとした後「デビュー戦の甘さが出ました」と最終9番で右OB方向の山に打ち込んだ。それも幸い、下に落ちてきてセーフ。パーに収めて、ここも「ラッキー」だった。
1996年に30歳でプロテストに合格後、98年からアジアのツアーを4年ほど転戦した。その後、結婚を機にクラブを置き、別の仕事についた。「レギュラーツアーには5試合ぐらいしか出ていなかったし」と、ゴルフを離れてトラックの運転手などをやって来たという。それでも「トラックにはサンドウエッジを運転席の横に積んで、砂場で打ったりしていた」とゴルフは忘れられなかった。
45歳になって「四捨五入したら50歳、シニアになるんでもう一度ゴルフをしようと思った」と、生徒約50人を抱えるレッスンをしながらシニアツアー入りを準備。今年の最終予選会で24位になって、試合に出られるチャンスが来た。
会場入りして「場違いなところに来たのかも」と思ったというが、大井手哲はじめ「昔のアジア仲間なんです」という面々が世話を焼いてくれた。「戻ってこられて、ほんと、幸せだと思います。こうして話を聞かれるのも気持ちいいです」と充実感に浸る。
ただ、悩みが1つ。「いままでずっと、試合の2日目がチョー下手なんで、明日が怖い。なんとかパープレーくらいで回れたらいいんですけど」。ひどかった練習ラウンドも本番で克服した。苦手の2日目も何とか出来るだろう。
(オフィシャルライター・赤坂厚)