2日間大会でまたこの人が勝った。通算8アンダーで井戸木と並び、18番で行われたプレーオフ。「宝物」でもあり「宝刀」でもあるドライバーが勝利をもたらす。ティーショットが「290ヤードぐらいは飛んだと思う」と本人もびっくりの飛びでフェアウエーへ。左に曲げた井戸木が第2打でバンカーに入れたが「パーで決着はつかないと思った」と、真板は残り129ヤードをピッチングウエッジでピン下1・5メートルへ。井戸木の絶妙のバンカーショットにも動揺せずに、思惑通りバーディーで決めた。
前日は1アンダーで20位スタート。序盤3、5番で短いチャンスを外して「こんなの入らないようじゃだめだなと思った」という。転機は6番。6メートルのバーディーパットを入れてから快進撃が始まった。10番まで5連続バーディー。「バーディーを取るにしたがって気合が入ってきた。二桁アンダーにしたら勝てるかなと思った」という。11番2メートルを外して連続バーディーが止まったが、最終18番でもうひと踏ん張り。「トップが8アンダーだったんで入れたら並ぶ」という3メートル弱のパットを沈めて65。珍しくガッツポーズも出た。
「運がよかったんだと思う。だれかが9アンダーに行くと思っていた」。後続を待ったが、一時は8アンダーに5人が並んだものの、最後まで残ったのは井戸木だけ。「みんな伸びなかったから勝てた。運がよかった」とまた言った。
表彰式のあいさつで倉本昌弘PGA会長が「真板選手、2日間大会はこれで4勝目」と紹介したように、昨年2日間大会で3勝を挙げ「2日間の帝王」とも言われた。今年もまた2日間大会を手にした。今季、シニアツアーには2日間大会が8試合あるので、真板は今年も脅威の存在になるかもしれない。
「狙って勝てるもんじゃないでよ」と苦笑いする。「でも、家族もびっくりするんじゃないかな」という。昨年は、シーズン前に家族旅行し、高尾山にお参りした。
「ゲン担ぎで家族から今年も同じことしなさいって言われて、ディズニーランドに行って乗り物乗るのに2時間半とか並んだし、高尾山にも行ってきた」という。開幕からその効果があったようだ。
使っているドライバーは4年目に入る。同じドライバーを使っていた選手のほとんどがもう割れて使えなくなっているが「長く使いたいから練習でも軽く打つだけ。オフはほとんど打たない」と、大切に扱っている。勝負どころのプレーオフ第1打で、その信頼を裏切らなかった。
1985年プロ入り以来、所属契約などせず、レギュラー時代からずっと賞金のみの収入でやってきた。「家族のためにも長く稼ぐ」のが目標。この勝利で優勝賞金800万円を稼いだ。そしてもう1つの目標をポツリ。「3日間、4日間大会に勝ちたいなあ」。本音がのぞいた。
(オフィシャルライター・赤坂厚)