昨年3月から治療し始め、ようやく快方に向かっていた右股関節痛。しかし、今度は1ヵ月前のスターツシニアで右脇腹痛に襲われた。バックスイングの際に決まって痛みが走るのだった。
ゴールドシニアの部は、今年68歳の誕生日を迎える選手に出場資格がある。今年8月5日に68回目の誕生日を迎える髙橋勝成は、そんな体の状態にも関わらず、あえてグランドシニアの部に出場する道を選んだ。
「あと2カ月ほどで68歳になりますが、まだ誕生日は来ていませんし、わずかの望みは残されていると思ったので、グランドの部に出場しました」と髙橋。日本シニアオープン3勝、日本プロシニア1勝と日本シニアタイトル4勝に、もう一つの日本タイトルを加えたい。68歳を過ぎてのグランドシニア優勝は難しくなるばかりだ。ラストチャンス。その強い思いがあったのだ。
前日は3アンダー・6位タイ。首位とは3打差の順位に食い下がる。あと2打少ないスコアだったならエージシュート達成だった。前半で4つスコアを伸ばしながら、後半はシャンクOBが飛び出し、スコアをとしての69。後悔が募るばかりだった。
そんな悔しさと逆転優勝への熱い気持ちを心に秘めての最終日。残り18ホールに賭けた。1番ホールでバーディー発進し、3、6、7番ホールでもバーディー奪取。首位を走る室田淳に肉薄する。迎えた9番パー4ホール。フェアウエイ左ラフからの2打め。ドロップすることを想定したショットだったが、目標ラインよりも右に大きく打ち出してしまい、痛恨の3パットを打ってしまった。
追い上げムードにブレーキが掛かり、後半は2バーディーを奪うのが精一杯。それでも6バーディー・1ボギー67でフィニッシュし、見事エージシュートを達成。優勝した室田には2打及ばずの通算8アンダー2位タイで「最後の」グランドシニアの部の戦いを終えた。
「67。偉いでしょ!? 右脇痛は短いショットほど顔を出すんですよ。上体を屈めるからでしょうね。仕方ありません。騙し誤魔化しながら自分ができる範囲の最高のゴルフで勝てなかったのは、諦めもつきます。来年からはゴールドシニアの部ですが、(同大会2連覇の)海老原清治さんには大きな顔をさせませんよ!」。早くも来年の大会に向け、髙橋は狼煙を上げた。そんな言葉を口にするほど、最終日67のスコアは自信の上積みをもたらしたようだ。
(PGAオフィシャルライター 伝 昌夫)