第1ラウンド前日に行われたプロアマ大会。18ホールのラウンドを終えた久保勝美は、ドライビングレンジでボールを打ち込み始めた。アイアンショットでは乾いた、澄んだインパクト音を奏でている。「ショットが切れていますね。インパクト音が良い」と声を掛けた。「そうですか? 僕にはそれほど良い音だとは感じられないんです。それに最近はラウンド中、すぐに切れてしまうんですよ。昔はそんなことがなかったのに…。逆にプライベートでは即ギレしなくなって、不思議ですよね」。久保はそう言って訝(いぶか)しがった。
そんな久保が好発進を遂げた。1イーグル・4バーディー・1ボギーの67。ベストスコアを叩き出し、2位に一打差をつけての単独首位に立った。
8番パー5ホールではピンまで60ヤードの3打目をサンドウェッジで直接放り込んでのイーグル奪取。最終18番パー5ホールではツーオンに成功し、7メートルのイーグルパットを「(インパクトを)緩めてしまいました」(久保)。この日2個目のイーグル奪取は逃したが、4個目のバーディーでフィニッシュ。切れる暇もないゴルフを展開したのだ。
再来週開かれる男子、女子、シニアのツアー対抗戦「3ツアーズ」に会長推薦でシニアツアー代表選手として出場する。「念願の3ツアーズ出場ですが、優勝争いとは違って今からドキドキしているんですよ」と久保。今季は2位が4回ながら、優勝は挙げていない。「自分が一生懸命やっても、他の選手がそれ以上のスコアを出したら勝てない。やってみないとわからないんですよね。とにかく、優勝争いをしていると楽しいので」。そんなコメントをしながら、久保は決して「勝ってみせます」「勝ちたいです」とは口にはしなかった。それほどまでに、優勝を誰よりも欲しているからだろう。2位コレクターとは、もう言わせない。久保の意地が、最終戦で果たして花を咲かせるか。
(PGAオフィシャルライター 伝 昌夫)