寺西明(52)が2日連続の6アンダー66をマークし、通算15アンダーに伸ばして2位に6打差をつけて今季初優勝、通算2勝目を挙げた。首位でスタートした寺西は、倉本昌弘(63)、西川哲(50)との競り合いになったが、7番から5連続バーディーで抜け出し、終わって見れば完勝だった。2位は冨永浩(57)と崎山武志(55)だった。
優勝争いが「一人旅」になっていることを、寺西は分かっていなかった。「途中に1つ(速報の)ボードがあるんですけど、見ていなかったんで、何打差あるのか、全然分かっていなかった。目の前の2人(最終組の倉本、西川)に勝っていればと思いまして。下からまくられたらしょうがないと思ってやっていました」。最終18番で倉本、西川がティーショットを池に入れ「池にさえ入れなければ(優勝できる)と思いました」と振り返った。
終わって見れば、2位に6打差がついていたが、序盤は苦しんだ。「去年勝った、いぶすき白露でもそうでしたけど、優勝争いとなるとバタバタになるのは分かっていました」という。2番パー5がこの日のポイントになった。ティーショットを右の池に入れた。行ってみると、水のない部分にボールがあった。ピッチングウエッジで出し、9番アイアンで1メートルにつけるバーディー。「大きかった。運がありました、今日は」と、ともにバーディーだった倉本、西川との1打差をキープした。
3番で第2打を木に当ててボギーにしたところで、バーディーの倉本にいったんは逆転を許したが5番で追いつき、7番から圧巻のバーディーラッシュが始まった。左3メートルを入れ、8番パー5では「難しい下りのフックライン」の8メートルを沈めて思わずガッツポーズがでた。9番パー5では「毎日同じパターン」という、第2打で手前のバンカーに入れ、そこから1メートルに寄せた。10番では第1打でグリーン手前の小さなバンカーに入れたが、そこもうまく出してOKに。締めくくりは11番パー3(187ヤード)。6番アイアンで3メートルにつけ、5連続バーディー。一気に抜け出し、そのまま押し切った。
今季、ゴルフ自体は好調を維持していたが、優勝という結果に結び付いていなかった。「こだわりがあって、崩れていくことが多かったんです。気持ちだけが先走ってしまって」という。練習ラウンドで一緒に回っている高橋勝成には「自分らしくやれと言われました」といい、今大会初日にたまたま食事をした室田淳にも同じことを言われた。笑顔で楽しくやる。寺西のモットー。この日はバンカーショットがうまくいったのも「佐野修一さんに教わったんです」と笑う。「先輩たちが優しく教えてくれるので、感謝したい」と話した。
感謝する相手がもう1つ。機械部品の製造や電気製品の組み立てなどの会社を経営しており「従業員は仕事をしているし、留守を守ってくれる役員もいる。自分はゴルフで頑張らないと。勝つことが、唯一(シニアツアー出場を)許してもらえることなんで。勝たないで帰ったら『何してるんですか』って言われますしね。でも、お客さんから応援の意味で仕事をいただいたり、トップセールスになっているんです。これで胸を張って忘年会ですね」と笑った。
昨年はアマ時代にも経験がほとんどない予選落ちを喫して「ほんと、悔しかったんです。リベンジできた」。今季残る最終戦いわさき白露は、ディフェンディングチャンピオンとして臨む。「何かしようとか、何をしなければということではなくて、今週と同じように最後まで笑顔でフィニッシュできたら」と、気負わず「寺西流」で戦う。
(オフィシャルライター・赤坂厚)