「勝負事って本当に最後までわからないよね」。スコアカード提出所から出て来た冨永浩は、プレーオフで戦う鈴木亨と田村尚之の姿を見ながらそう呟いた。
最終日最終組のひと組前で、この3人はラウンドした。鈴木も田村も4ホール目終了時点で3連続バーディー奪取のロケットスタート。田村も1、3番ホールでバーディーを奪い、優勝争いを演じ始める。冨永は4番ホールでようやくバーディーパットをねじ込んだものの、5、6番ホールでの連続ボギーで通算1アンダーにスコアを落としてしまったのだった。
「二人とも凄いゴルフをし始めて、僕は(優勝争いの)邪魔をしてはいけないと思いました(笑)」と冨永。前半9ホール(パー35)を鈴木は33、田村は31で回り、冨永は7番ホールでバウンスバックしての35。この時点で田村が通算6アンダー首位、鈴木が通算5アンダー2位、冨永は7位タイだった。
後半に入っても田村と鈴木がスコアを伸ばしあっての優勝争いを展開。最も間近で二人の熱い戦いを見ていた冨永は「いいリズムでスイング、プレーをしていたから、自然に僕のゴルフも良くなった感じです。12番ホールでボギーを打ったけれど、14番ホールから3連続バーディーですからね。15番ホールなんて距離が10メートル以上もあって、大きく曲がるラインのパットが入りました」と驚いた表情を浮かべながら、この日のラウンドを振り返った。最終ホールでは見事な寄せワンのパーで締めくくり、5バーディー・3ボギー、通算4アンダーでフィニッシュ。単独3位となって賞金ランキング39位に浮上。来季の賞金シード圏内に入った。
試合は最終ホールで田村と鈴木がともにパーパットを決めきれず、プレーオフの末に鈴木が優勝した。「あんなに二人ともに好プレーをしていたのに、最後の最後でボギーを打つなんてね。僕だけパーで申し訳ない気持ちになってしまいましたよ。最後の一打をカップに沈めるまでゲームは終わらない。それを改めて感じさせられた試合になりました。この教訓をツアー残り2試合に活かしていきたいです」。冨永は気を引き締められたことを喜んでいた。
(PGAオフィシャルライター 伝 昌夫)