バリー・レーン(58=イングランド)が通算10アンダーでマークセンを振り切って、日本初優勝を飾った。「ゴルフのキャリアの中で、欧州、米国、アフリカといろいろと勝ちましたが、アジアでの優勝がありませんでした。日本で勝つことができて、すごくうれしい」と満面に笑みをたたえた。
首位2打差を追ってのスタートだったが、序盤で波に乗った。1、3番で7~8メートルのパットを沈めて早々とマークセン、田村に追いつく。「今日はリラックスしてプレーできました。逃げずに攻めの姿勢で『できる、できる』という気持ちでやりました」という。5番で4メートルを入れ、7番から3連続バーディー。アウトを29(パー35)で回って、一気に首位に立った。
田村は伸び悩んだが、マークセンが追いかけてきた。「マークセン選手は、基本バーディーを取ってくるという意識をもってやっていました。いつ取るかわからないので、常に私はバーディーを取らないといけない、ボギーにしたらすぐ取り返さないといけないと思っていました」という。13番のボギーでマークセンに追いつかれた直後にその思いが形になった。14番でピン奥に付けたが、6メートルを入れて再び引き離した。
1打差で迎えた最終18番パー5、第3打でピン下2メートルにつけた。それを見たマークセンは「絶対入れると思った。イーグルを取らないと負ける」と、第3打を狙ったが、カップ横を通過して奥に。そのバーディーパットが外れた時点で、レーンは「2パットでいいので、勝ちを確信しました」と振り返った。
英国、イングランドのブラックネル出身で、14歳からゴルフを始めた。ゴルフのキャリアは40年以上になる。1976年にプロ転向し、欧州を中心に、世界各国のツアーに参戦。欧州ツアーでは5勝を挙げ、ライダーカップやワールドカップの代表にも選ばれている。これまでの優勝した国数を聞くと「スコットランドとイングランドは別々に数えるのですか」と、英国らしい質問も。同じ英国として数え始め「ワン、トゥー、スリー…サーティーン」と返答。今回で13カ国目になった。
日本にはレギュラーツアー時代からたびたび来日していた。シニアになっても欧州賞金上位でシニアツアーに出場。それがなくなった今年は最終予選会に挑戦して2位となった。ただ、来日できるのは欧州シニアツアーが空くこの時期の約1カ月。今回も福岡シニアとこの大会の2試合だけのために最終予選会を受け、来日した。日本が好きな理由は?「ゴルフ場がいいし、気候も素晴らしい。それに寿司、てんぷら、鉄板焼きと食事がおいしい。他の選手も優しくしてくれます」と話した。今大会では「ホテル(の場所)を間違って取ってしまって、寿司屋まで車で45分かかったけど、運転して食べに行ってきました。サーモンとマグロが好き」と笑った。
実は夫人が乳がんを患い、今年8月に切除手術を受けていた。この大会は乳がんの早期発見などを啓発するピンクリボン運動に賛同し、選手らがピンクリボンをつけてプレーしている。「乳がん撲滅に力を入れていると聞きました。そういう活動は支持したい」といい「今日もピンクリボンを見るたびに、妻のことを思いながらプレーしていました。でも感情が沸いてくるので、抑えながら」と話した。
日本で絶対的な強さを誇るマークセンに勝った要因を聞いた。「フェアウエーをキープすれば、コースマネジメントがうまくいきます。私の方がキープ率は高かった。それが2人の差になったと思います」。確かにマークセンはこの日少し飛びすぎたり、少しバウンドが悪かったりしてラフに入ることが多かった。運も味方をした。そして何より、勝ちたい気持ちが強かったということなのだろう。
(オフィシャルライター・赤坂厚)