コース内に吹く強い風が、ピンフラッグをはためき続けさせる。気温以上に冷たさを感じさせ、ショットの行く手を阻む。グリーンは乾き、速さを増し、コース難易度を高める。
インスタートして2ホール目の11番パー5。2打目をグリーンカラーまで運んだ柳沢伸祐は2パットでホールアウトし、バーディーを先行させた。13番パー4では6メートル、14番パー4では2打目をピンそば50センチに着けて連続バーディーを奪う。17番パー4では下り3メートルの距離を、見事にタッチを合わせてねじ込んだ。前半でスコアを4つ伸ばし、後半は1バーディー・1ボギーにまとめて68でフィニッシュ。4アンダー2位。明日は最終組でスタートする。首位とは1打差だ。
「今週のグリーンは最高の出来栄えですね。(芝目が)綺麗で速い。3パットは1回でしたよ(笑)。コースを熟知していない分、警戒し過ぎずに攻められましたし、ショットが良かったんですよ」と柳沢は目を細める。
強風下でのラウンドとあって、フルスイングを封印。あえて大きめのクラブを選択し、スリークォーターやハーフショットでショットライン出しを優先させ、かつスピン量を抑えて縦の距離感のズレを防いだ。
今季前半は腰痛に悩まされ、練習も覚束なかったが、夏場以降に回復し始めた。10月の日本プロシニア選手権では最終日最終組でラウンドし、単独4位の今季自己ベストフィニッシュをマークしている。「同組で回った(優勝した)米山さんのショットを間近で見ることが出来てよかったです。今日のように風が強い中、抑えたショットを打ち続け、スコアを作って行った。そのイメージを今日、僕が再現出来た感じですかね」。
腰痛でフルスイングができなかった。練習もそれほどできなかった。これまでの不安材料が逆に奏効したラウンドとなった。そうも思えるが、日本プロシニア選手権の敗戦で得た経験を、すぐに活かしてのスコアメイクとも言えるだろう。
明日の最終日、最終組で一緒に回るのは5アンダー首位の盧建順、4アンダー2位タイの秋葉真一、3アンダー3位タイのG・マイヤー。「盧さんは、普段から低い球しか打たない。何とか日本選手が優勝したいですね。日本選手が優勝できるように、一緒に回る日本選手を応援しながらプレーしますよ。自分も行きますけどね。ちょっと及ばなかったら、すぐに応援に回ります」と柳沢。2試合続けて「応援」する側になる必要もない。コントロールショットを駆使し、今度は自身が「応援」される側になればいいのだから。
(PGAオフィシャルライター 伝 昌夫)