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シニアツアー

【トラストグループカップ 佐世保シニア/FR】得意のローボールでコースを攻略 金鍾徳がシニアツアー通算4勝目

2018年10月14日

  第6回トラストグループカップ佐世保シニアオープンゴルフトーナメントの最終ラウンドは、最終日8バーディ・ノーボギーで回り通算12アンダーとスコアを伸ばした金鍾徳(57)が優勝、シニアツアー4勝目を挙げた。2位には9アンダーで盧建順(58)。初日首位だった水巻善典(60)は3位タイ、川岸良兼(51)は7位タイに入った。 

  前日よりもスタート時間が30分早められ、午前7時30分に第一組めがティーオフ。ホール間をセパレートしている松の葉が揺れている。その葉が擦れ、風音をさらに倍加させていた。風速3・8m/s。

 今から61年前の1957年に開場した佐世保カントリー倶楽部・石盛岳ゴルフコースが大会の舞台。標高400メートルを超える地に作り上げらただけに、気象庁発表の風速データ以上の風を選手たちは感じていた様だ。ウインドブレーカーを着込んだり、セーターを重ね着したりしている姿も見受けられたからだ。

 首位タイでスタートする川岸良兼は、前日の囲み取材インタビューで「風が吹いたら意識してダメでしょうね」とこぼしていた。マイナス思考が働く選手もいれば、逆にプレス思考でスタートティーに臨む選手もいる。

「(母国)韓国のコースに似ている、ドライバーショットを真っ直ぐ打って行かなければスコアを作れない。曲げたらダメね。それに強い風が吹くから高い球を打つのも良くない。だから、選手仲間たちは『金プロ(向き)のコース』って試合前から囃し立てられていましたよ(笑)」。最終日、首位とは2打差の4アンダー4位タイからスタートした金鐘徳は、大会事前の冗談話をそう明かした。

 1番パー4ホールはアゲンストの風向きで、ピンまで150ヤードの2打目を8番アイアンで低めに抑えたショットを打った。2・5メートルのバーディーチャンスに着け、沈める。2番パー3ホールで1・5メートル、3番パー5ホールでは3打目をOKパットの距離にピタリとボールを止める。4番パー4ホールでの7メートルのバーディーパットをねじ込み、金は圧巻の4連続バーディー奪取に成功したのだった。

「強い風が朝から吹いていたでしょ(笑)。バーディーを取って、後ろの(最終)組はスコアを落としていた。(逆転首位に立って)インコースに向かう時には2位と3打差あったから気楽にプレー出来ました」。

 97年にキリンオープンで日本ツアー初優勝を飾る前までは、韓国ツアーやアジアンツアーを主戦場にしていた。「コースがゴルファーを育てる」というゴルフ格言があるが、金は風の強いコースでの修行時代はもちろんのこと、韓国、アジアンツアー転戦時代も3、4番アイアンでのローボールショット練習に明け暮れていたという。「99年の静岡オープンでジャンボ(尾崎)さんと一緒に回った時、『風が吹いた時は強いね』って言われましたよ」と金。そんなエピソードを優勝インタビューで話すほど「風ゴルフ」が得意なのだ。

 2015年に原因不明の胸部骨折と筋肉痛でツアーから一時撤退し、16年は公傷が適用されて前17試合に出場。見事シード権を奪取し、17年はコマツオープンで6年ぶりのシニアツアー通算3勝目を飾っている。今年はベスト10入りをすでに7回も数えるが、勝利の美酒は味わっていなかった。「ショットは良いけれど、パットがね…。悪天候続きでどの試合もグリーンのコンディションが良くなかった。でも、このコースのグリーンは今年最高の出来栄えで、速くてディボット跡が少なくて完璧でした」。長尺パター名手と言われる金にとって最高の舞台が整っていたことになる。「風」と「コンディションの良いグリーン」が揃ったなら「まだまだ優勝チャンスはあると思います」と金は胸を張った。それはショットメーカー&パット名手が、年間複数回優勝を宣言したと同じだ。

(PGAオフィシャルライター 伝 昌夫)