「ムフフフッ」。囲み取材の受け始めから終わりまで、原田三夫は抑えても抑えきれない感情があった。
インコースからスタートし、14番ホールで1メートルのバーディーパットを沈めた。15番パー3ホールではティーショットをカップ4メートルに着け、連続バーディーを奪取。16番ホールでも1・5メートルを1パットで沈めて3連続バーディーを決める。前半でスコアを3つ伸ばしてのハーフターン。午前中とは違って風が強まって来た。
1番パー4ホールの2打めはグリーンに齧りつくように何とか乗った。カップまで14メートルのバーディーパット。「3パットだけは避けたい。何としてでも寄せ切りたい」。距離感を出すことに集中したことで、邪念は無かった。打ち出したボールは想定したラインに乗り、カップに吸い込まれるようにして入った、入ってくれた。バーディー。
5番ホールでは1番ホールでのバーディーパットを再現するかのように同じく14メートルのバーディーパットが決まってくれた。「寄せるつもりだけの」パットがカップに沈んでくれたのだ。この時点で5バーディー。トーナメントリーダーを争っていることは想像が出来た。
迎えた6番パー4ホール。原田のドライバーショットは左方向へ大きく曲がった。「風が強まって来たこともあって、それを想定して打ったつもりでしたが、ボールを捕まえ過ぎてしまい、OBを覚悟しました。フォアキャディーがセーフの旗を振っていたので一安心したものの、ボール位置まで行ってみてガックリしました。木の根っこに止まっていたんです」。真横に打ち出し、レイアップ後の3打めをピン横4メートルに乗せた。ボギーを覚悟したが、短いボギーパットまでをも外してダブルボギーを叩いてしまったのだった。「今日(の幸運)もこれで終わったな」と腹をくくった原田だったが、ゴルフの神様からまだ見放されてはいなかった。「8番ホールでも12メートルのロングパットが一発で入ってくれて、おまけに9番パー5ではピンまで80ヤードの3打目がOKの距離に着いた。堪りませんよ、10何メートルのパットが一日3回も入るなんて。もう笑いが込み上げて止まりません。ムフフフッ」。嬉しさ一杯。笑顔一杯の原田。確かに幸運もあっての7バーディー・1ダブルボギー67。首位とは1打差の5アンダー3位。明日の最終日は最終組でスタートする。原田が、シニア初優勝を飾るチャンスは得た。残り18ホールも集中プレーで「無欲」なパットを打ち続けたなら頂点に立つこともできる。明日は、最終グリーンで呵々大笑となるか、注目だ。