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シニアツアー

【セヴンヒルズKBCシニア/FR】タイのウィラチャンが日本シニアツアー参戦1年目で初優勝

2018年09月15日

 最終18番で、2メートルのバーディーパットを残したタワン・ウィラチャン(51)。先輩のプラヤド・マークセン(52)は自身の30センチのパーパットを先に沈めて、ウイニングパットのおぜん立て。それにこたえるように、ウィラチャンは有終のバーディーで通算15アンダーまでスコアを伸ばし、日本シニアツアー参戦1年目で初優勝を遂げた。

 今季5勝、ウィラチャンが「日本のキング」というマークセンを、ねじ伏せた。マークセンに1打差リードでスタート。2番パー5で左の林に打ち込み、フェアウエイに戻した後、100ヤードほどの第3打をピン30センチにつけた。マークセンは持ち前の飛距離で6メートルに2オンしており、このイーグルパットを沈めたが、ウィラチャンもバーディーで通算8アンダーに並んだ。ここから先、並んだことはあっても、逆転は許さなかった。

 9番、左手前に外したマークセンがチップインバーディーを奪って先に11アンダーとしたが、ウィラチャンも右8メートルを入れて11アンダーと並ぶ。根負けしたように、マークセンは12番パー3でボギーとし、ウィラチャンが「キーポイントになったと思う」という13番パー5。第2打でグリーン手前カラーまで運び、10ヤードほどをチップインするイーグルとし、バーディーを取れなかったマークセンに3打差をつけた。「ちょっと今日は勝てそうもないと思った」とマークセンに思わせたのも勝因だった。

 「とても、とてもうれしい。日本にきてこんなに早く勝てるとは思っていなかった」という。2006年にアジアンツアーの賞金王の資格で日本のレギュラーツアーに参戦した経験で、芝に違いがあることは知っていた。欧州シニアツアーでも2勝するなど、欧州やアジア各地で試合をしてきて環境の違いには慣れていたが、12年ぶり来ても「芝の違いには慣れなかった」という。

 そんなウィラチャンを助けたのがマークセンだった。「いつも練習ラウンドで回ってくれて、パッティングの打ち方を教えてくれた。今回、練習ラウンドで『よくなっている』と言ってくれたのが、優勝に結び付いたと思う。感謝しかない」と話した。敗れたマークセンは「負けたがハッピー。彼の初優勝に立ち会えたから、とてもうれしい」とコメントした。

 ウィラチャンが日本に参戦を決めた理由に「タイから近いこと。食事がおいしいこと。日本の人は優しくて親切なこと」と3つを挙げた。まだまだ日本語はできず、通訳を介しているが、ギャラリーを前にした優勝インタビューでは、ちょっと怪しかったが「ありがとうございます」と日本語にも挑戦した。

 タイでは男子プロが500人ほど、女子プロが80~100人ほどが活動し、海外にも出ているという。自身もそうだが、タイ企業のシンハビールがジュニアのころからスポンサードし「ゴルフに集中できるようにしてくれている」というのが、日本はじめ世界でタイの選手が活躍している源だという。

 初優勝から次の目標は?「日本プロシニア(10月4~7日、茨城・サミットGC)に勝つこと」と、マークセンが一昨年制した大会の名前を挙げた。今季、タイ6勝、米国、韓国各1勝、そしてヨーロピアンシニアで1勝している。さらに、スコットランドのセントアンドリュースで行われた全英シニアープンでは6位に入っている。日本勢にとって海外からまた1人、強敵が現れ、実力を示した。日本勢に奮起を促すウィラチャンの勝利ともいえそうだ。

(オフィシャルライター・赤坂厚)